dream

□狭い空
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私たちの見上げる空は、狭い。

壁という円に切り取られたそれは狭く、手を伸ばせば握り潰せてしまうほど。

それなのに、あぁ。
どうしてそれを越えて行ってしまうの。
鳥も、貴方も。


「何してんだよ、お前」

空に向かい、手を開いては閉じてを繰り返す。
体育座りで壁に背中を預けている私。目の前に仁王立ちする彼。
逆光で、彼の表情は見えない。

「空を、捕らえようとしてた」
「は、頭おかしくなったか」

馬鹿にしたような笑いをし、彼は私の隣へ腰を下ろす。
ジャン、と彼の名前を呼べば、先程の私と同じように空へ手を伸ばす彼の姿。
視線は空から離さず、なんだよ、と返事だけ寄越された。

「壁の中の空は狭いね」
「そうだな」
「でも鳥は何処までも飛んで行く」
「あぁ」
「ねぇ、ジャン」

あぁ、太陽が眩しい。
目の前が霞んで、貴方の顔が見えなくなる。

「貴方も行ってしまうのでしょう?ここから、外へ」

貴方の背中には友の死と自由の翼。
私の背中には毒を持った薔薇の花。

私は、この世界を守りたい。
この狭い空を、大切な家族を。
愛する人は、守らせてくれないから。

「何もずっと壁の外で闘うわけじゃねぇ。あくまでも調査
だ、調査」
「それでも、生きて帰ってくる可能性のほうがずっと低いわ」
「お前、嫌なこと言うなよ…」

ぽたり、ぽたり。
あぁ、大変。雨が降ってきた。
こんなに太陽は眩しいのに、どうしてかしら。

「泣くな、名無しさん」
「泣いてなんかいないわ」

俯いてどうにか誤魔化そうとしたけれど、両頬を手のひらで包まれ、顔を上げられてしまう。
いつの間に、正面にいたの。

「名無しさん、俺を信じろ」

重なった唇。
温かい手のひら。

「貴方を奪う、この世の全てが憎いわ」

それでも、この世界は愛おしい。

「必ず帰ってくる。名無しさん、お前に会いに」

こんな狭い世界で。
こんなにも美しく残酷な世界で。

私たちは確かに、恋をしていた。



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