短編

□雨の日
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6限目も終わろうかというとき、不意に窓側の席から、
「あー、雨降ってきた」
とぼやく声が聞こえてきた。
つられて窓の外を見れば、どんよりと沈んだ空から、細く降ってくるものがうかがえた。
傘を持ってきてよかった、そう胸を撫で下ろし、わたしはまた、黒板に目を向ける。
朝の予報では降水確率は70%だと報じていたが、とうとう降ってきたらしい雨は、わたしが昇降口にいく頃にはさらに強さを増していた。
周りには、親に連絡をとって迎えに来てもらおうとスマホに耳を当てている生徒がちらほらいて、準備不足だな、なんて、傘を広げながら少し得意になってみる。
家までは歩いて15分ほど。その道のりを、雨粒が傘を叩く音をBGMにしながらあるく。
まとわりつく湿気に、いつもは鼻歌まじりで帰る道も、自然と無口になった。

家まであと5分くらいかというとき、少し先の電柱の元に、段ボール箱があるのを見つけた。
「あれって、まさか......」
ある種の予感を抱きつつ、その箱に近づきそろりと中を除き混む。
そこには案の定というべきか、仔猫が雨に濡れていた。
にぃ、と少し警戒するようにこちらを見て鳴くその仔猫は、私の手に収まってしまうくらいの小ささだった。
思わず、マジか、と声がもれてしまったのも仕方がない。
こんなに小さな生き物を捨てた人への嫌悪と、見つけてしまったことの後悔がおさえられなかったのだ。
自宅はマンションでペットは禁止されているし、なによりお母さんが動物アレルギーのため、うちではとても飼ってやれない。
しかしこの雨のなか、放置することもできなかった。
その場にしゃがんで猫にも傘を傾けつつ、どうするかをしばし思案する。
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