gift

□プレゼントBOX
1ページ/1ページ


生まれた事を祝う今日、ルーシィは妖精の尻尾のメンバー達から沢山の祝いの言葉と贈り物を受け取っていた。
祝いの席でやっぱりというかなんというか、男性陣は勝負と称した喧嘩を始めてしまう。
ルーシィはとばっちりを受けまいとカウンターへと避難をした。
ミラにスムージーを奢ってもらい、慣れたもので喧騒の中でもゆっくりとした時間を過ごしていた。

ギィ……

ルーシィの耳にギルドの扉が開く音が聞こえた。
勢いよくその方向へと身体を向けるが、そこにいたのは買い出しを命じられていたジェットの姿だった。ルーシィは小さく肩を落とす。
それを見ていたミラは眉を下げて微笑む。

「ほんと、ナツってば何処へ行っているのかしらね?今日はルーシィのお誕生日だって言うのに。」
「な、なんでナツの名前が出るんですか!?」

当たりです。顔を真っ赤にして否定してもバレバレで。

「べべ、別にナツは大事な依頼で2、3日は会ってませんけど。でも……」
「でも?」

なんでもないです。

そう一言話すとルーシィは星の大河を手にすると、喧騒の中へと飛び込んでいった。

「あー、楽しかったー。今日はありがとうエルザ。すっごく嬉しかったよ。」
「当たり前の事を祝っただけだ。楽しんでもらえて私も嬉しいぞ。」

祝いの席が終わったのは深夜だった為、エルザはルーシィを部屋まで送っている。その道中エルザのケーキに対しての情熱を聞かされていたが、今度新しく出来たスウィーツの店に行こうと言う約束でなんとか熱弁を終息させた。

部屋を目の前にして、エルザが身構えた。ルーシィも鍵のホルダーに手をかける。
部屋の階段には、何やら蠢く気配があるのだ。
二人は慎重に歩み寄ると、聞き覚えのある呻き声が聞こえてきた。

「ナツ!?」

ルーシィが駆け寄ると、そこには身体を横たえ苦しそうに唸るナツの姿があった。そのすぐ隣ではハッピーが瞼を閉じピクリとも動かなかった。

「ナツ、しっかりしろっ。誰にやられた!!」

エルザがナツの胸ぐらを掴みガクガクと前後に揺らす。ルーシィが止めにいると漸くナツの口が開く。

「…き、気持ち、わ、りぃ……ぐえ……」
「うっおもっ!!」

エルザは無言で弱っているナツと目覚めないハッピーをルーシィの背に乗せると片手をあげ、あとは任せる。と言い残し脚力を生かし屋根に飛び乗るとそのまま女子寮の方向へと去っていった。
予想外の行動に唖然としていたルーシィだが長いため息を吐き出し、ナツを担ぎ直すと部屋へ入るために階段を登った。

カチリ………

部屋に入ると、時計の長針と短針が重なる音が耳に届く。

「すぎちゃった。」

ぽつりと呟き、ナツをソファに降ろす。スプリングの揺れでさえ酔ってしまうのか更に情けない声で唸る。ハッピーに至っては未だ目を覚まさない。心配になったルーシィは顔を近づけ呼吸を確認すると、小さな可愛い寝息と時折「おしゃかにゃぁ」と聞こえたのでハッピーに関しては心配ないと安堵した。
唸るナツを見下ろせば、どうみても乗り物酔いの症状だ。見たことのない程に苦しむナツを見ていると流石に文句も言えなくなり、ルーシィは水を取りにナツから離れキッチンへと向かう。
冷えた水が入ったグラスを持ちナツが転がっているソファに目を移すと、顔色は真っ青だがしっかりと座っていた。

「ルーシィ。」
「な、なに?改まって気持ち悪いわね。」

真剣な表情で見つめられ早くなり始めた鼓動を誤魔化すかのように文句を言ったが、ナツは気にする事もなくハッピーの風呂敷から何かを取り出した。

「ルーシィ、誕生日おめでとう。これ俺とハッピーからのプレゼントな。」

ん。と差し出される可愛くラッピングされた箱を取り出す。ルーシィは思わず両手を広げ、ナツからの贈り物に口元が緩んだが直ぐに引き締めた。

「なにいってんのよ。もう12時回ってるのよ。バカナツ。本当は昨日、欲しかったのに。」

目を伏せ手元の贈り物を握りしめる。

「なにいってんだ?まだ12時まえだぞ。」
「え?」

ナツの言葉に驚いたルーシィは時計を見上げると、ちょっと傾いたそれは11時55分を指していた。

「え?だってさっきは……」

慌ててナツに視線を戻すとソファに沈み唸りながら眠る姿があった。

「はやっ!?」

睡眠に落ちる速さに感心したルーシィは、ナツとハッピーに毛布をかけ自分は机に向かう。


シュルリ

心を踊らせながら、今度は緩む口元を隠そうともせずに明るいブルーのリボンをほどく。

箱の中には透明なビンが入っていた。

「可愛い。」

ビンをゆっくりと回すと、カラカラと固いような柔らかいような音を鳴らして転がる。

金平糖

ホワイトとピンクとブルー、そしてイエローの金平糖。
金平糖は遥か東方のお菓子。マグノリアのお菓子専門店にも置かれているが、ここまで綺麗で可愛いものは見たことがなかった。おそらくこれは本場の金平糖。
汽車に乗る時間はそうとう長い筈だ。乗り物が弱点のナツがこれを自ら選びその地まで買いに行っていたようだ。余りの遠さに最終便で帰ってきたのだろう。
そう考えるとルーシィの胸が熱く高鳴る。

「あたしの誕生日プレゼントなんだから、ちょっと自惚れても良いよね?」

ルーシィは眠るナツに近よりぺたりと座り込む。

「ありがとう。ナツ。凄く嬉しいよ。」

ルーシィは感謝と乗り物酔いが治るように願いながらナツの額に、そっと唇を落とした。

おしまい


おまけ

チュンチュンと早起きの小鳥達のさえずりに起こされたハッピーは見た。
ソファに横たわるナツの胸の上に頭を乗せて眠るルーシィの姿を。

「どぅえきてるるぅぅ。」

小さな小さな声で未だ眠る二人をからかった。

2015/3/14

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ