gift
□美味しいお菓子
1ページ/1ページ
【美味しいお菓子】
「何食ってんだ?」
中々現れないモンスターを待ち伏せていたナツは、隣にいるルーシィからお菓子の匂いを嗅ぎ取り、視線をそちらへ向けた。少女は丁度スティックタイプのお菓子を包装紙から取り出して食べているところだった。
「……お腹空いちゃって」
「はぁ?」
「だっ、だって、しょうがないでしょ!?」
待ち伏せをして早二時間。
食事を準備していたミラジェーンから幾つか貰ったお菓子をかじる少女に、少年は呆れて物が言えなくなった。
***
今日は珍しく遅めに起きた少女はギルドで遅めの食事を摂ろうとしたところ、これまた何故か上機嫌な少年がやって来て。
「行くぞ!」
問答無用で少女の手を取りクエストに強制連行した次第であった。連れていかれる間際、ミラジェーンは気を利かせて少女のバックにお菓子を幾つか忍ばせていた。
ハッピーは?と少年の相棒の所在を聞けば、ウェンディんとこ、と言い返された。
色々突っ込みたい所は山程あったが、電車に乗ってしまえば少年は直ぐに延びてしまい。
「……今回だけよ」
少女は大きな溜め息をつき、苦しんでいる少年に膝枕をしてやった。
移動時間一時間。
やっとで辿り着いた依頼場所は森の近くにある小さな集落。
話を聞けば、どうやら最近モンスターの群れが近くで出るようになり。
「猟師達が丁度、遠出をしているもので」
女子供老人しかいない現在、そんなモンスターの群れは脅威でしかなく。
「任せろ」
少年は依頼主に太陽のような笑顔を向けた。
***
しかし、モンスターの群れは一向に現れず。
「……本当にここかよ」
「しょうがないでしょ。時間帯はランダムだって言ってたんだから」
少し拓けた森の中の空間。
地面に所々血の痕や獣の足跡が見えているので、ここに出没しているのは確かなのだろう。しかし、いつ現れるか分からない。それに、堂々と立っていたら相手が警戒して姿を見せない場合もある。
丁度近くに草木に隠れられる場所を発見した少年は、しかし既に痺れを切らしていて。
そんな中、隣にいる少女から食べ物の匂いが漂ってくれば、より一層少年は不機嫌になり。
「オレにもくれよ」
「えぇ。あたし、何も食べてない」
「んだよ。ミラから何個か貰ってたじゃねーか」
見てたぞ、と問い詰めるように顔を近付ければ少女はぐうの音も出ず。
「ちょっと待ちなさいよ」
食べていたお菓子をくわえてホルダーバックの中を漁り出す。
何となくその横顔を眺めていたナツは、不意にお菓子をくわえているルーシィの唇に目が留まり。美味そうだ、と思うが早く行動に移し。
手を伸ばして手折るように少女にお菓子を噛ませ。
突然の出来事にお菓子を口に含めながら目を見開いて少年に振り向き。
少年はその口の中にあるお菓子全てを奪うように少女の唇を塞いだ。
*
舌先で柔らかい唇を割り口内に侵入し。
形の良い歯並びや内頬、下顎や柔らかくて小さな舌を掠めながら目的の物に辿り着き。
それを器用に舌先で奪って己の口内に招き寄せ、少女の唾液によって少し湿気ったお菓子の欠片を咀嚼した。
少女はゴクリと嚥化する少年の喉元から目が離せずにいた。
手に持っていたお菓子も全て平らげると、ごちそーさん、と未だに全身を紅潮させている少女に空になった包装紙を投げる。
そして、気合い十分にペロリと己の唇を舐めながら立ち上がれば、丁度ターゲットのモンスターの群れが現れてきていて。
「燃えてきたぞ」
少年は地面を駆った。
***
ルーシィが意識を取り戻して急いで立ち上がった頃には、既に事は終わっており。
「何してんだ?ルーシィ」
終わったぞ、とナツは事も無げに少女に振り返った。
「ってか、何もしてねーじゃねーか」
「……誰の所為だと思ってんのよ」
ジト目で見てくる少年に流石に腹が立ち、握り拳を震わせながら星の大河に手を掛けたところで。少年は心底不思議そうに首を傾げながら少女の元に近付く。
何て不用心なのかしら、と呆れつつも反撃に出ようと顔を上げたところ。
ナツはルーシィを引き寄せて食むように唇を塞いだ。
*
「うん。ごちそーさん」
満面の笑みでそう言うと、固まって動かない少女の手を取り、少年は依頼主の元へと足を運んだ。
あれよあれよという間に事は進み。
気付けば電車の中でグロッキー状態の少年に膝枕をしていて。
「……もう、何なのよ」
ルーシィは真っ赤な顔を両手で隠し、頭から湯気を上げながら俯いた。
2014/09/06トコヤ様
トコヤ様あああいつもありがとうございますぅぅ!!
ツイッターで呟いた「カ―ビィの口移し回復をナツルーで妄想したら禿げそう」発言を素敵な小説にして頂いたうえに強奪、掲載に許可まで!!禿げる。禿げあがる!!
ナツもルーシィも可愛いよぅぅぅ!!
本当に本当にあるがとうございますm(__)m♡