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□if〜もしもの世界〜序章
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空は蒼く澄み渡り、小鳥たちがさえずっている。
だが、大地は違った――――
赤黒く染まった大地には人が倒れている。
天輪の鎧は砕け、掌はキツく握られているが立つことは出来ずただただ、前を睨むしかないエルザ
身体は傷だらけで流れ出る血をぬぐうことなく氷の盾を造形し、後方の仲間たちを護るグレイ
血にまみれ、悲鳴をあげる身体を構うこと無く目的に向かい足を一歩、また一歩と前に進む……
ナツ
蒼い空に浮かぶそこには、黒衣の人物がふわりふわりと、歪んだ笑みを浮かべている。その手には――
気を失い、黒衣の人物にもたれ掛かるルーシィの姿がある。
『ナツ。これがお前の最も大切なモノか、何とも脆弱な。』
くつくつと笑いながら、ルーシィの涙で濡れた頬をベロりとぬらりとした舌で舐めあげる。
「っ!!……ルーシィを放しやがれっ!!」
それを目の当たりにしたナツは力を振り絞り大地を蹴り、殴りかかったが見えない壁がそれを退けた。
壁に血痕を残しナツは落ちていく。自分が流した血溜まりへと落ちていく……。
『ナツ。これはお前への礼だ。この私を開放してくれた。な。お前の最も大切なモノを私に捧げることを許したのだ。感謝するのだね。』
ぎゃははと下品に笑った黒衣の人物は纏う衣服より黒い炎と共にルーシィを連れ、消えた。
ルーシィ……
ナツは大量の血を吐きだし、意識を手放した。
序章 完
2015/01/18