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□if〜もしもの世界〜薺
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昼下がりの少し強い日差しに、空を見上げていたルーシィは眩しさから目を細める。

「よし!もうすぐママから出された宿題が終わる。頑張るぞぉ!!見ててねハッピー。」
「ルーシィがんばれ!!」

ルーシィが母親から出されている宿題。それは星霊魔導士としての修行だ。
今両親は、仕事の為に遠くの取引先に一緒に出かけていた。それは少しばかり長期滞在になる為に、師であるレイラは、ルーシィに課題を出していた。

「……よし、出来た。出来たよハッピー!!」
「うん、よかったねルーシィ。でもふくしゅうしなきゃ。」
「そうだね。でなきゃママじゃないや、師匠に次を教えてもらえないもんね。」

復習をする前に休憩をしていたルーシィに目に前に光の渦が現れ、よく見知った母の星霊が降り立った。

「あれ?どうしたの?勝手に出てきたらママに叱られるよ、カプリコーン。」
「……ルーシィ様。メェは今から貴方様に伝えねばならない事があります。」

固い声にルーシィは首を傾げたが、普段から表情を出さないカプリコーンが歯ぎしりをした事に、今まで感じたことの無い不安が湧き上がってきた。

「カプ、リコ…ン?どうしたの…やだ何時もみたいに立派なレディになる為にって・・・説教してくれないの?ほ、ほら、あたしお行儀悪く地面に座っているよ?ね、ねえ…」

言葉に詰まり、話さなくなった星霊にルーシィは何時も注意されている格好をする。それは足を放り出して地面に座り込む格好だった。
それでも、なにも言わないカプリコーンにルーシィは立ち上がり、彼の胸元に飛びつき服を深い皺が出来るほど握りしめる。
まだ小さなハッピーは、状況が飲み込めずに二人の上空を輪を描くように、不安げに飛んでいた。

「ルーシィ様………。」

カプリコーンの言葉を聞いたルーシィは、その場に崩れ落ちた。


それから一週間。ルーシィは只そこに居るだけの泣きじゃくる子供だった。



遠くで、教会の鐘の音が聞こえていたが、ルーシィの耳には届いてはいなかった。
腕の中で眠るハッピーを抱きしめ、両親の名が刻まれた墓の前で静かに立っていた。
赤くはれた目元からは、もう涙は出ていない。

「ここに居たのですか?ルーシィ様。」

声のした方向にルーシィは気だるそうに振り向く。

「では、先ほどの条件で宜しいですね。」
「……うん。」

小さな、今にも消え入りそうな声がルーシィの口から発せられる。

「ルーシィ様。私の力が及ばないばかりに…辛い選択をさせてしまいました。本当に、本当に申し訳…ごめんなさい …ごめんなさい。」
「……泣かないで…大丈夫。」

目の前で膝をつき、泣き崩れる女性に、ルーシィは腕を伸ばし、抱きしめる。

「あたしには少しだけど時間が出来たから…だから、貴方もその時まで頑張って?」
「…ぅぅ…グス…はい。」

ルーシィと、女性は与えられた時間で、強くなる事を約束した。



続く
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