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□if〜もしもの世界〜春うらら
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――春うらら
今日の天気を言葉で表すとそんな感じ。
だが、フェアリーテイルのカウンターは、ジメッとしている。
「ジュビアのせいではありません…」
「分かってるっての、原因はカウンターの彼女だ…」
グレイとジュビアが離れた場所から揃ってカウンターの彼女を遠巻きに見守って(?)いた。
「なあつう〜…」
グレイの言う彼女とはカウンターに突っ伏し、情けない声で大好きな人物の名を発しているルーシィの事だった。
「ナツぅ…」
何度名を名をを呼んでも彼の人は現れず。
それもそのはず、ナツはマカロフと共に評議院に呼び出されたいたのだから。
原因はナツのみが扱うことのできる『滅竜魔法』の事だ。もともと古の魔法は資料が極端に少ないせいで『滅竜魔法』について報告せよ。との命令が下った。
つまり、ルーシィは置いてきぼりをくらってしまったのだった。
「ナツ…何時帰ってくるのかなぁ?3日で帰ってくるっていっていたのにぃ…もう一週間たったよぅ…会いたいよぅ…」
「ルーシィって恋愛には開放的だったんだね。しかも五月蠅いよ。魚食べる?」
「…ハッピー、あんた、褒めてんの?文句言ってんの?慰めてるの?大体最近あんたは…」
「あ、シャルルおはー!!」
思いを寄せる白猫がギルドにやってきたのを目ざとく見つけると、ルーシィの愚痴を無視して飛び去っていった。
「いいなあハッピー…シャルルがいてぇ…はあぁ…ナツぅ…」
青猫と白猫のやり取りを喜ばしくも、羨ましいルーシィは大きな溜息と共にもう一度ナツの名を呼んだ。
普段ならここで「なんだ?」とナツがやってくるのだが、流石に遠く離れた評議院までは彼の耳には届かない。
完璧なナツ不足へと陥ったルーシィを仲間達はただただ静観していた。(実は昨日心配したレビィが声を掛けると、延々とナツの話をされたらしい。)
ルーシィの注文したオレンジジュースの氷が溶け切った頃、漸く彼女が席を立つ動作を見せた。
「あら、どうしたの?何時も遅くまで待っていたのに今日は帰っちゃうの?ルーシィ。」
「うーん、ホントは家賃がやばいんです。ハッピーと近場の仕事捜します。」
「あら、そう?じゃあ、これはどうかしら?」
「どれですか?あ、これならいけそうです。ありがとうございますミラさん!!」
悩み事の一つである家賃の目処がついた事により、元気を取り戻したルーシィはハッピーを連れて仕事に出かけようと入口に向かい扉にてを掛けた途端に、抱いていたハッピーを床に落としてしまった。
足元から「ふぎゃっ酷いや。」と声はしたが、ルーシィの耳には届いていなかった。
「ただいまルーシィ。」
「いま帰ったぞ。」
ルーシィの眼の前にはマカロフ(多分ルーシィは気が付いてない)と待ち人であったナツが眩しいくらいの笑顔で立っていた。
「ナツ――!!おかえりー!!ナツナツナツぅ!!」
「な、なんだ?どうしたルーシィ?」
涙を浮かべながら全力で飛びつき、首に腕を回しぶら下がる状態のルーシィを抱きとめるが余りにも必死に名前を連呼する彼女に流石のナツも眉を下げた。
「ナツぅ会いたかったよぉ!!」
「ん…お…」
俺もと続けたかったナツだが、目線を下げればマカロフとハッピーがニマニマと笑っているのが分かり、軽く咳払いをしてルーシィに離れるように促した。
だが、ナツ不足のルーシィにとっては効き目などなく更に力を入れて抱きしめてきた。
「・・・つっ…」
「え?あれ?ナツ服の下…」
「何でもねえ。」
「でもでも、ほう、んン!!」
ナツとマカロフの帰還に仲間達が扉の所に集まってくるのを感じ取ったナツは、喋ることをやめないルーシィの言葉を彼女を抱きとめているせいで自由にならない手の代わりに、キスすることで阻止した。
が、ルーシィがナツ不足なら、ナツもルーシィ不足な訳で、当然塞ぐだけのキスで終わる筈もなく…
「やれやれ。見とられんわい。ハッピー行くぞ。」
「あいさー。ルーシィはともかくナツってばココ外ってこと忘れてるね?くふふ。」
マカロフは肩をすくめると、ハッピーと共に仲間達が二人に辿りつくのを阻止する為に扉をくぐった。
おしまい
ちょっとシリアス→
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