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□if〜もしもの世界〜秋の夜長の過ごし方
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秋の夜長にベッドを占領するのは可愛いあの子。




「…今日は来るなって言ったはずだけどな?つか、ハッピーは来てねーのか。」

1週間程ナツが一人で仕事へ出かけていたので、ルーシィには帰宅時間は分からないが、多分遅くなるから家には来るなと伝えていた筈が部屋に入ってみればそこには熟睡しているルーシィの姿があった。
いったい何時からいたのかと思いながら、部屋を見渡してみるがハッピーの姿は見当たらない。
匂いもしないとなるとルーシィが一人で来たということになる。

呆れかえりながらも久し振りに見るルーシィの無防備な寝顔に自然と引き寄せられ、少し開いている唇を自分の唇で塞ぐ。

「ん…」

微かに漏れる吐息にナツのスイッチが入る。
ナツの体重がベッドに掛り、ギシリと音が鳴るがお構いなしに顎に指を掛け口を開かせた。

「…ん…んん…んっ!!」

思うように息が出来なくなり、苦しさから目が覚めたルーシィはナツの胸を叩くが当の本人は全く動じずに更に深く喰らいつく。
抵抗していたルーシィの腕に力が無くなると、漸く二人の間に隙間が出来た。
息苦しさから解放されたと息も絶え絶えに安堵するルーシィだったが、ナツが身体を離した理由は他にあった。

「ちょっ!!ちょっと!ナツ何してんのよおおお!?」
「なにって、服脱がしてんだよ。見て分かんねーか?」
「ななななんで!?」
「なんでって、そりゃルーシィによ…」
「いやああ!!それ以上言わないでええぇ!!そそそれは嬉しいけどって違うーー!!てか、今日は駄目駄目!!」

脱がされ掛けていたトップスを奪い取り、ベッドの隅っこに逃げる。
露骨な拒絶にナツの機嫌が悪くなるのを感じながらもルーシィはいやいやと首を横に振る。

「なんでだよ…」

ナツの声の低さにルーシィが涙目になる。
彼女の涙に気が付き、ナツは自分の苛立ちを逃がすかのように深呼吸をし、優しく名前を呼ぶ。

「ルーシィ…」
「だって…だってぇ…きょ…今日は…」
「今日は?」
「今日は…」

涙目ながらも、何かを決意した眼差しでナツを見つめる。






「今日は勝負下着じゃないんだもん―――!!」










「………は?」

十分過ぎるくらいの間が開き、間抜けなナツの声が静かな部屋に響いた。
ナツは片手で顔を覆い、肩を震わせながらそのまま俯く。

「あぁ…そ…ぐ…」
「ぐすん…あい…ナツ?」
「ぶはっくくくっ!!くかかかかっ!!何だよそんな理由かよ。!」
「そんな理由て、酷いよナツ!女の子には死活問題なのよ!!」
「かかかっ、なら仕方ねーなぁ。じゃあ、次はちゃんとして来いよ。」

ナツの言葉に一瞬にして茹であがったルーシィは、陸に上げられた魚のごとく口をパクパクさせていた。
その口の端に触れるだけのキスをして、ナツがベッドから降りていくのを見ていたルーシィは離れる熱に残念に思いながらも、自分が望んだ結末に納得することにした。

「あールーシィ喰い損ねて腹減ったなあ。なんか作ってくれよ。」
「あ、あたしはご飯じゃない!それにさっき冷蔵庫見たら空っぽだったから流石のあたしにもご飯は作れない。」
「やっぱ、ルーシィ喰うしかないか。」
「ナツの意地悪!!」
「意地悪上等。好きな奴弄るのは男なら当たり前なんだけどな。」
「あたしは女の子だからそんなの分かんないわよ!」

そんな言い合いをしている内にナツはルーシィを再びベッドに追い詰めていた。
ルーシィは自分の身体を両腕で庇い、真っ赤な顔で精一杯睨むがナツはどこ吹く風。

「分かんねぇ?でもよ、男で彼氏で恋人の俺がルーシィ喰うってのは当たり前。これでも我慢してんだぞ。」

我慢という自分の発言に、ん?と、疑問から首を傾げたナツは、最近見せるようになった無邪気な笑顔で言葉を続ける。

「やっぱ訂正。我慢出来ねえ。明日から毎日勝負下着付けてこい。今日は俺は見なかった事にしとく。」
「暴君!!」
「暴君結構。つー訳でもう黙っとけ。」


何かを言いたげなルーシィの口を塞ぎ、二人はゆっくりとシーツに沈んでいく。

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