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□if〜もしもの世界7〜救出
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ハッピーをエルザに預けると、一歩ごとに崩れそうになる足を叱咤しながらルーシィは教主の所へ近寄るが、あと少しというところでナツが間に身体を割り込んできた。
教主を標的に歩み進んできたが、眼の前にナツが現れたことでナツのマフラーを力の入らない手で掴んだ。
掴まれたマフラーに一度だけ視線を落とすと手を払いのけ、そのまま右手をルーシィの首に絡ませる。
グレイが反応し魔法を発動させようとしたが、ナツはルーシィを盾にするように移動させた為、それは叶わなくなり、エルザとグレイは動く事が出来なくなった。

「ナツ、その頭…ぜんっぜん似合わないんだけど?てか、何その黒い炎、気持ち悪いよ?」
「あら、私があげたのよ。素敵じゃない。」
「あんたには聞いてないわよ…」
「ウフフフ、それより貴女ナツの仲間?」
「そうよ!!」

ふうん、と教主は人差し指を口元に当て何かを考える素振を見せる。
口元にある指の爪は紅く鋭く尖っていて、それがルーシィに近ずいて肌に触れると一線を書くように横に薙ぎ払われた。
むき出しの左肩に熱い感覚が走り、次いで生ぬるいものが流れる感覚がしてきた。

「痛っ、何すんのよ。爪はお洒落の為にあるよ!!そんなことに使うなんて言語道断よ!!あ、護身の為ならいいかな…て、違ーう!!うあーんナツぅツッコミ入れてよー!」
「…」

(爪は指先の保護の為にあるんだよ!)

と外野の二人と一匹は内心ツッコミを入れる。

「ウフフフ、フラフラな割にはよく吠えるわね。ああ、負け犬の遠吠えっていうのかしら?」
「な、なんですってー!!あたしは負けていないわよ!?」
「だって、ナツは貴女を敵とみなしているから拘束してるんじゃないの?ウフフフ」
「でででも、全然苦しくないし?」
「ウフフフ、そう?ナツ…」

教主がナツの肩に手を置くと、ルーシィの息が詰まり顔が歪む。
ナツはルーシィの顔をやはり無表情で見ていたが、チラ、と少しだけ視線がずれる。その先にはルーシィの血が腕を流れ落ちる様子を見ているようだ。

「く、らえ!!」

自分に腕にナツの意識が止まり、拘束が緩んだ瞬間をルーシィは見逃さなかった。
血の流れている手を教主目掛けて振り回すと血が飛び散り、身体に付くのを嫌がった教主は思わず大きく飛び退く。

エルザとグレイはチャンスとばかりに教主とナツを捉えるべく飛び出したが、ルーシィの取った行動に再び動けなくなってしまった。


――――――


ルーシィはナツの魔力が教主と似ていることには既に気が付いていた。
自分に魔力を与え、ほぼ空っぽの状態の彼が魔法を使えるはずがない、だったらあの女がナツにどんな方法かは今は考えたくはないが、魔力を与えだのだと。

ルーシィは首への拘束を払いのけ、ナツのマフラーを握りしめ思い切り自分の方へと引き寄せると、突然の動きに対応出来なかったナツの体がルーシィへと傾いていく。


ルーシィ今度は自分がナツに魔力を与えた。
与えたというよりは、まだ馴染んでいないナツの魔力を返したのだ。


ナツがルーシィにしてくれた様に、唇を合わせて。



(あの時はルーシィ意識あったんだぁ。)

状況を飲み込めなでいる真っ赤な顔のエルザと、口を魚のようにパクパクさせているグレイを見ながら、ハッピーは今思っている事が言葉にでない様に両手で口を塞ぐ。

そんな女の魔力なんて追い出してやる。

そう思いながらルーシィはほとんどの魔力をナツに与えて、そのまま力尽きズルズルとナツの身体を滑るように倒れ込んでしまった。
その様子を一部始終見ていた教主は怒りを露わにしてルーシィの腹を蹴り上げる。

「貴女、私のナツに何してくれるのよ!!このっ!!」

もう一度ルーシィを蹴る為に踏み込んだ教主をナツは制止する。

「あら、ナツがやる?そうね気が済むまでどうぞ。」

恐ろしいほどの怒りの形相でルーシィを睨んでいるナツに、教主はにっこりと微笑み、譲る。


――――――


「…覚悟はいいか?」
「え?」
「女だからって容赦しねぇ…」

今の今まで一言も喋ることの無かったナツが声に出した言葉に教主は驚愕した。
怒りの矛先はルーシィではなく、自分にあることに漸く気が付く。
ナツの身体からは黒い炎が燃えあがっているが、次第に炎が黒から赤へ変わり、ついには紅蓮へと変化していった。
髪の色も既に桜色へと戻っていた。

教主は、ナツのその姿に恐怖し一歩後ずさるとナツは石畳の床をも溶かしながら一歩前へ出る。
ひい、と、情けない声を出ながら教主はエルザの元へ、文字通りに転がりながら助けを求めてきた。

「わ、私を助けろっ!!お前たちはアイツ仲間だろう!!ナツを止めろ!!」
「ええ、ナツとルーシィは私たちの大切な仲間です。止める術はよく知っています。」

エルザは優しく微笑み、グレイに支持を出す。

「では、一番の方法で彼を止めて見せます。グレイ!!教主を拘束しろ!!」
「おう!!」

その言葉を合図に氷の鎖が教主の身体を取り巻き、自由を奪う。

「ナツ、ルーシィの為にも早くここを出なければいかん。今は我慢しろ、いいな。」
「…分かってる…」


エルザの声は優しいが、眼光は鋭く威圧感がある。

炎は既にナツの身体からは消えていたが、怒りは治まっていないようで、牙を剥き教主を睨んでいた。

それは教主への怒りなのか、自分自身への怒りなのかは誰にも分からない。




――――――



今回の作戦はルーシィとハッピーの救出が最優先だった為、グレイが教主の人質としての拘束、意識の無いルーシィをナツが背負い、エルザは最後尾で武装兵の攻撃を避けながら教団の追尾を振り切った。
教主は安全を確認できた時点ですでに氷の鎖に縛ったまま適当に道端に置いてきたようだ。


大きな街に着き、ルーシィを治療の為、病院に緊急入院させるとエルザとグレイは報告の為に一旦ギルドに戻っていった。


ナツとハッピーは病院の近くに宿を取り、ルーシィが退院するまでこの街に留まることに決めた。




続く

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