text

□if〜もしもの世界5〜魔力
1ページ/1ページ

ルーシィはナツの存在を確認すると、微かに頬笑み、再び瞼が閉じてしまった。


抱きあげたルーシィの身体からは、殆ど魔力を感じることができないことに更に焦りが募る。
このままでは生命が維持できなくなる恐れがでてきた。
ナツはルーシィの手錠を素早く焼き切るが、いくらか魔力を吸いとられたせいか軽い眩暈を感じた。
少し触れただけで眩暈するのだ。今の今までどんなに辛かっただろうか。

(もっと早けれは。)

ナツは下唇を噛んだ。

「ナツ、ルーシィどうなるの?」
「…今すぐにでも魔力を供給しないともたない…」
「え!?そんな…う、グス…るーじぃ…」
「方法は…ある…が、」
「が?」

言い渋るナツにハッピーが首を傾げる。

「確実とは言えねえ…けど、やってみる価値はあると思う。」
「ほんと?それなら大丈夫だよきっと!!ナツだもん!!」
「その自信どっから来るんだ?」
「ここからだよ。」

ハッピーがどんどんと自分の胸を自慢げに叩き、涙をふき取りながら早く早くとナツを急かす。
そこまで自信ありげに、ナツなら大丈夫と言うハッピーの姿に、ナツの口元が緩く弧を描いていた。
ナツが瞼を閉じ深呼吸をして、魔力を練り始めるのをハッピーは固唾をのんで見守る。


「!!」

ハッピーは思わず声が出そうになり慌てて両手で自分の口を押さえる。

ナツの邪魔はしたくはない。

(でもでもこれって…)



――――――

ぐったりしているルーシィを横抱きにし胸に寄り添っていた顔をそっと上を向かせ、体制を整えたナツの頭がルーシィに傾いていくのをハッピーは緊張した面持ちで見ていた。

ナツの唇が微かに開きルーシィのそれに重ねられた。
暫くその状態が続いていたが、ナツの額に汗が滲み出はじめると顔が上を向き大きく息を吸い込む。

「…っは…きつ…」

小さな声で呟いた後もう一度唇を合わせる。
口を押さえたままの状態でハッピーはナツとルーシィを交互に見比べて、漸く理解できた。
ナツがルーシィに唇を合わせるたびに、ナツには苦悶の表情が、ルーシィには正常な呼吸と少しだけ穏やかな表情が見られるようになってきたのだ。
彼は炎を食べて直接魔力を摂取している。そのせいか即座に魔力が回復している。
ナツは教えてくれなかったが、おそらく、それを応用したのだろうとハッピーは考えた。


だが、


「ナツ!!ナツってば!!それ以上やったらナツが倒れちゃうよぉ…」

肩に乗ったままのハッピーはナツの耳を軽く引っ張り、ルーシィから離れるように促す。
ゆっくりと重なった唇が離れるが、ナツは項垂れたまま荒くなった呼吸を整えていた。

「ナツ…ルーシィは大丈夫なの?」
「…とりあえずは…て、とこかな…ふぅ…」
「でも、今度はナツが倒れちゃいそうだよ…」
「…大丈夫だ…グレイが来る。今、階段…降りてきた…」

ナツの聴覚はグレイの足音を聞きとっていたらしく、直ぐに彼が顔を見せた。

「グ、レイ…服…はぁ…」
「うっ!!てか、フラフラなナツに突っ込み入れられるとは思わなかった…」
「じゃあ、おいらが!!グレイ服!!」
「2回言わんでいい!?それよりハッピー元気そうで安心したぜ。」


ハッピーは、ナツが息を整えている為に話せる状態ではないので代わりに二人の様子を伝える。
魔力の口移しは内緒にして。

牢屋から出る為にグレイがルーシィを背負い、ハッピーは翼を出しナツを支え階段を上る。

通路に出ると、ハッピーがグレイの頭に乗っかり、疑問に思っていたことを聞いた。

「でもグレイ、よくこの場所がわかったね?」
「ん?おお、壁が微かに点々と焦げてたからな。多分ナツが残したんだろうと思ってな。」
「ナツそんなことしてたんだぁ」
「まぁな……わり…先行っててくれ…」

壁に身体を預け、鋭い眼光で後ろを睨んでいるナツに不思議に思ったハッピーが近づこうとすると、ナツはそれを制止する。

「ナツ?」
「早く行けっ!!はやくっ!!」

ナツが叫んだ瞬間、黒い何かがナツの体に絡みつき、連れ去った。




続く

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ