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□if〜もしもの世界1〜ナツ
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教団インフィニティ

希少価値が高く、魔力が高い魔獣を狩り、それを教主に捧げている。

最近では、竜を探し、各地で問題を起こしている。

評議会もようやく重い腰を上げて、教団の調査を進め始めた。。



「まあ、完結に話せばナツを標的にしているといいうことじゃな。」
「いや、簡潔すぎますマスター…」

簡単すぎるマカロフの説明に傍にいたエルザが思わすつっこむ。
とたんにギルド内が騒がしくなる。


竜はいないはずだ。
なんでナツが狙われるんだ?
ルーシィは、もしかしてとばっちり受けてないか?
でも、さっきの奴……

「ナツを竜の申し子って言ってたな……」

その言葉にとたんに静まり返るギルドメンバー達。
皆の視線を受けたナツは力なく床に座り込んでしまった。

「俺のせいで…ルーシィが…じゃあ、俺がそこへ行けば…」
「ナツ!!それ以上言うのはワシが許さん!!」

怒りを含んだ静かな声が空間に響く。

「ナツよ。これからお前の事を皆に話す。これはルーシィを助け出す為にも、お前を奴らに渡さない為にも、大切なことじゃ…よいな?」

微かにナツの頭が頷くのを確認をして、マカロフは話し始めた、


ナツが、最後の竜と言われる火竜に育てられたこと
その竜に魔法を教えられたこと
それこそ古の忘れられた魔法使い、滅竜魔導士
滅竜魔導士はその身体を竜のそれと同等になる
五感が研ぎ澄まされ、魔法の威力は感情にも左右されることも多いと言われる
それが、ナツ・ドラグニル


「じゃあ、さっきの見たこともないナツの魔法って…ルーシィの匂いに気が付いたのも…」
「うむ、グレイ、それが滅竜魔法じゃ。残念だがワシは見たことはないがな。ナツが見せてくれんのじゃ…」

マカロフに注がれていた視線が、再びナツに向けられた。
項垂れるナツの表情は皆には分からないが、多分脅えているのだろう。
肩が微かに震えているのが分かる。

オオカミ少年


ナツを蝕む言葉。
育ての親や自分を否定される言葉。

―――――


少年は親と慕った竜が忽然と消え、何日も火山地帯をさ迷っていた。
その声を聞きつけたのか、一人の女性が少年に声をかけた。

「とーちゃーん、うあーん…」
「どうした?親と逸れたのか?」
「うん…ぐす…とーちゃんが居なくなった…」

こんなところに子供を置いていく親に怒りを感じた女性だったが、少年の前に膝まつき優しく話しかける。

「そうか、なら私の村に来るといい。この近くにあるのだが、どうだ?」
「でも…」

少年が迷っていると、ぐーという音がお腹から響く。

「決まりだな。お腹が減っていてはなにも出来まい。」
「う、うん」

ナツは照れながらも女性の差し出す手に自分の手を乗せた。

「俺、ナツ。これでも魔導士なんだ!」
「ほう、私はエクレアだ。なんの魔導士なんだ?」
「ドラゴンスレイヤー、滅竜魔導士!!」
「え?」

エクレアは聞いたことのない種類の魔法に驚きを隠せなかった。
ナツは、急になにも話さなくなったエクレアの顔を見上げ、首を傾げる。
そのまま、何も話さず村までたどり着いた。



ナツがやって来たのは、火の民の村だった。
火の民は少数民族のせいか、閉鎖的だ。
エクレアが責任を持つといってナツと共に暮らし始めたが、外からきたナツには何かと強く当たる。

「竜はいるんだ!!俺が、俺の魔法がその証拠だあっ!!」
「何べん同じ事を言わせる!!竜は居ない!!お前の魔法はただの火の魔法だ。下らん!!」

悲しいかな、ナツの滅竜魔法は幼いが為に大人の火の民には効かなかった。
そして、誰一人ナツの言うことを信じなかった。それが、ナツにあるアダ名が付く事なる。


オオカミ少年

エクレア以外は皆、ナツではなくオオカミ少年と呼ぶようになった頃、余りにも必死なナツの態度に興味をもったのか、同世代の子供達は面白半分にナツに向かって火の魔法を放つ。
しかし、魔法が当たる寸前にナツはその火を喰らった。

「…まじぃ」
「う、うわ、こいつ火を食べた!ウソだろ!!」
「だから、滅竜…」
「気持ちわりぃ〜!?」

気持ち悪い、その言葉にカチンときたナツはおもわず、口から炎を吐き出し、子供達に怪我をさせてしまう。

「申し訳ありません。今後はこのようなことが無いように言い聞かせますので、許しては頂けませんか。」
「エクレアがそう言うならば…しかし、次はありませんからな!!」

深々と頭を下げるエクレアにナツは少なからず反感を持つが、怪我をさせたという負い目から彼もしぶしぶだか、頭を下げた。

「ナツ、滅竜魔法は強力だ。人に向かって使うのは危ない。それが子供とはいえ、炎に耐性がある火の民でさえ、怪我をするのだから…」
「分かってる!!分かってるけど、あいつら信じてくれないし…俺の事、気持ち悪いって言うし…最近じゃ、石とか投げてくるし…皆がみんな嘘だって…オオカミ少年て…ぐす…名前で呼んでくんないし…」
「ナツ、竜や滅竜魔法を信じているのは、今は私だけだが、いつか必ずお前を、ナツを信じてくれる人達に出会える。だから、強くなろう。身体も、心も…私が傍についている。」

エクレアの優しい眼差しに、ナツは、うんと力なく返事を返した。




―――――



静まり返ったギルドに音が戻る。

「スゲ…」
「すげーナツ、お前もしかしてすげーんじゃねーのか!?」
「おう!古の魔法がこの目で見れるなんて思ってみなかったぜ!!」
「なに!!お主らナツの魔法をみたのか!?」
「見た見た!!ばっちり見たぜマスター!なんだっけ?火竜の?」
「咆哮!!凄かったぜ―マスター!!」
「残念だったなぁ。わはは。」
「な、なんじゃとおおおおー」

マカロフがメンバー達の話を聞き、がっくりと肩を落とす。隣に居たエルザはちょっとばかり可哀そうに思うくらいの落胆ぶりだった。
急に自分の事で騒がしなった仲間に唖然となっていたナツにグレイが声を掛ける。

「ナツ、お前が何に脅えていたかは知らないがよ、なんでそんなスゲー魔法隠してんだ?」
「お!脅えてなんかねー…隠してたのは…どうせ誰も信じねーって思っていたから…」
「は!あんな魔法見せられて信じませんなんえいえねーっての。馬鹿かお前?魔導士ってのはな、その魔法の価値は見ればわかんだよ。ま、初めてみる滅竜魔法には驚いたがよ?」

そうだそうだ。とフェアリーテイルの仲間は口ぐちにグレイに同意する。
ナツの周りに集まった仲間を見上げると、頬に温かい何かがホロリと流れた。

「!!ナツお前泣いてんのか?」
「…そんなわけねぇ。グス…目から鼻水が出てんだ…」
「そんな訳あるかーー!!」

スコーンと小気味良い音と共にナツの額に酒瓶が当たり、頭が上を向く。
上に向いていた頭をゆっくり起こし、ルーシィ曰く、凶悪な眼を開く。
すでに涙(?)は見えない。

「…誰だ?いま酒瓶投げたのは?」

仲間は一斉に目を反らす態度にナツは苛立つ。
もはや隠すつもりが無いのか、ゆらりと立ち上がり、口元から炎が漏れ出している。

「良い機会だ、お前らに見せてやんよ。滅竜魔法……火竜の鉄拳!!!!ぅおらあああああ!!」
「「「「「ひいいいいいいっ!!」」」」」


フェアリーテイルは恒例の喧嘩が始まった。
今までは、参加したことが無いナツが中心となって。

ナツの心から、オオカミ少年が居なくなった瞬間だった。




―――――



「親睦会もそこまでじゃ!!ルーシィ救出作戦を皆に伝える!!」

マカロフの一喝により、ピタリと喧嘩が止まった。



続く

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