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□if〜もしもの世界0〜動き出す運命
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ナツは、今非常に困っている。かつてなく困っている。
その原因を作ったのが、あの、毎度お騒がせの星霊魔導士ことルーシィである。

「ナツ、ルーシィはまだ来ていないのか?」
「ナツ、ルーちゃんにこの本渡しておいて。」
「ナツ、ルーシィと仕事行かないのか?」
「ナツ、ルーシィにもう少し優しくしたらどうだ?お前のツッコミはきつすぎるぞ」
「やあ、ナツ。ルーシィは元気かい?」
「ロキ…てめーは契約してんだろうが…」
「はは、ノリだよ。」
「ノルなっ!!」

ナツ、ルーシィ、ナツ、ルーシィ……

最近、何故かルーシィに用のある奴等は高確率でナツに声を掛けてくる。
それはあながち間違ってはいない。ギルドに居る間は、当たり前のように二人は並んで座っているのだから。
ハッピーに聞け、と言えば、ハッピーはナツに聞いてと返しているらしい。

「いっぺん、本気で髭抜いたろか…」
「なーに物騒な事言ってんだ?ナツさんよ?」
「……服」
「おあっ!?」

グレイが器用にシャツを脱ぎながらナツの傍にやってきた。
グレイはエルザを含め、ナツとほぼ同時期にギルドに入ったせいか、よく話はするようだが、そこはやはり炎と氷。気は合うのだが、相性は悪い。(ルーシィ談)


「なんだ?変態氷野郎?」
「あ?なんだと?じゃねえ、ナツお前に客だ。」
「客?」
「おう、ルーシィに用があるらしいんだが、まだ来てねーってんでお前んとこ連れてきたんだ。」
「………はあぁ…俺にじゃねーじゃん。」

グレイが指差す方向に首を回したナツがとたんに厳しい表情に変わる。

「はじめまして、ナツ・ドラグニル様…私はルーシィ・ハートフィリア様にお会いしたくて、ここを訪ねましたが、お留守のようでしたので、その方がナツ様なら知っていると仰るので。」
「…そうかよ。白々しい奴だな、てめえ…」

ニコニコと人当たりの良さそうな40代ほどの男性にナツが噛みつく。
いや、噛みつくどころか戦闘態勢に入ろうとしている。
それを感じ取ったグレイがナツと男性の間に入り、ナツを宥める。

「ナツ、なに噛みついてんだ?先方に失礼だろうが!?」
「失礼?ルーシィを訪ねてきた奴からなんでルーシィの匂いがすんだ?しかもあいつの血の匂いもさせやがって…」

普段冷めた感じのナツが感情を露わにしたことに、少なからず驚いたが反対に喜ばしくも思った。
多分、ルーシィがナツの壁を壊してきているのだろう。

「ナツ、落ち着け、お前らしくな、い…」
「ぅるせ―…黙ってろグレイ…」

振り返れば、ナツの口元からチロリと吐き出される炎が見え、グレイは言葉に詰まる。

(何だ?炎の魔法にアンナのあったか?しかも、拳が炎で燃えてる?魔法陣も発動してないんだぞ。炎の造形魔導士なんて聞いたこともねえ…)

「ははははは、流石です。ナツ様。いやあ、僕も侮っていましたよ。申し訳ありません。」

人当たりの良さそうな男性は、ナツに指摘され態度を一変させた。
男性の笑い声に、ギルドが静まり返る。

「流石、竜の申し子。ナツ・ドラグニル様。貴方様の五感は本当に素晴らしいですね。」
「てめえ…」
「彼女はお会いした時に少々手が付けられなかったので子猫ともども怪我をさせてしまいました。今は無事ですよ。今は…ね。」

にたりを口元を歪ませる男性の手の平に黒い霧が発生し、それが黒い大鎌を形成した瞬間、ナツに向かって振り下ろされた。恐ろしい言葉と共に。

「ナツ・ドラグニル!!その竜と同等のその血肉を我らが教主に与えたまえ!!」

大鎌の攻撃を、グレイは横へ、ナツは後方へと跳躍して避ける。
その為、ガツンと床に大鎌が食い込んでしまったのをナツは見逃さなかった。

「火竜の咆哮ッ!!」

ナツの口から炎の塊が男性目掛けてはなたれ、爆発した。
炎と煙がギルドを包んだが、肝心の男性がいない。まるで霧のように消えていまったのだ。

空間に男性の笑い声が木霊する。

『ははははは、滅竜魔法、確かに確認いたしました。ルーシィ様にお会いしたければ、我らが教団にいらしてください。それまでま丁重にお預かりしていますよ。はははははははは……』

気味の悪い木霊が聞こえなくなり、行き場の無いナツの怒りが、炎の拳によりギルドの壁が崩壊する。
ガラガラと壁が崩れる音以外聞こえなくなった空間に、誰かが呟く。

「ルーシィは大丈夫なのか?それに…今のナツの魔法は……なんだ?」
「竜の申し子?」

その疑問に、はっと我に帰るナツの脳裏にある言葉が蘇る。


オオカミ少年


今の今まで怒りに満ちた表情が、今にも泣き出しそうな表情になる。

「ナツ…」

グレイがナツの肩に手を置こうとしたその時。

「少し遅かったようじゃの。」

このギルドのマスター、マカロフの声が響き渡った。


続く

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