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□if〜もしもの世界〜炎
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今回の仕事は倒伐系。一体の巨獣が村を襲うので、倒してほしいという依頼だ。
ナツの拳を頭に受けた巨獣が怒り狂い、木々をなぎ倒しながら二人と一匹を追いかける。


「なんでこの仕事選んだんだルーシィー?」
「うう、だって家賃が…家賃がぁ…倒伐系はサクッと儲かるんだもん。」
「もん。じゃねぇ…バッカ野郎が―っ!!なら自分のレベルに合わせろっ!!」
「うえ〜ん。ナツごめんなさいーー!!」
「ルーシィはお金の亡者なのです。あい」
「ハッピー酷っ!!」

闇雲に逃げ惑っていても、巨獣は諦めはしないだろう。
そう考えたナツは林を抜けて、少し開けた草原を探すためにルーシィとパッピーの空から道案内をさせた。
ルーシィから少し先に草原が在ることを告げられ、走るスピードを上げる。

「ルーシィ!!アクエリアスを喚ぶ準備しとけ!!」
「あー、なんで今?彼女は超怖いんだけど…」
「あ”?」

口答えしたルーシィを思い切り睨む。
ギルドで一番の凶悪な眼をもつと言われるナツの睨みに、ハッピーは震えあがったがルーシィはケロリとしている。

「滅竜魔法使うから延焼を食い止める為にきまってんだろうがっ!!」
「…ナツ…流されるよ?」
「……喚べ」
「あ、あいさー」


怒りを含んだ地を這うような低い声に、流石のルーシィも言うことを聞くしかなく、水筒を取りだし、金の鍵を準備する。


―――――


ある日、ギルドの仲間達からは何故ナツの事が怖くないのかと聞かれた事があり、ルーシィは必ずこう返す。

『ナツは優しいよ。ただ、その優しさを表に出さないだけなの。』

ルーシィは初めの頃は、ギルドのほとんどがナツに近寄ろうとしない態度に憤っていた。
だがそれは間違っていた。ナツが皆に近寄らなかったのだ。
本人に何故?と聞けば、面倒くさい。と返事がきた。
滅竜魔導士だということも、マスターにしか話していない。
もう一度、何故?と聞けば、間をおいてルーシィにだけ聞こえるように答えた。

『もう、あんな思いはしたくねぇ…一人が楽だ…』

そう告げたあと、ナツは鱗模様のマフラーをグイと口元に上げ、窓の外に眼を移した。


―――――

ルーシィしか知らない滅竜魔法をナツは発動する。


「火竜の…咆哮っ!!」

全てを焼きつくすかのような業火がナツの口から吐き出され、巨獣の足元の大地をえぐり取る。
えぐり取られた穴に巨獣の足がハマり、バランスを崩す。その隙を見て、最後だと言わんばかりに強力な攻撃を仕掛けた。

「火竜の鉤爪!!しまった!!」

鉤爪を側頭部に当てるはずが、巨獣が思っていたより早く体制を立て直したために、頬に攻撃が当たり、巨獣の牙が嫌な音と共に砕け、空へと飛び散る。

その先には、ルーシィとハッピーが浮遊している。

「ルーシィ!!ハッピー!!」


草原に着地し、振り返るとそこには飛び散ってきた牙を全て弾く水の渦に守られたルーシィとハッピーの姿があった。

「アクエリアスを呼んでいたか。」

ほぅ、と、安どするも聴覚が優れるナツに物騒な会話が聞こえてきた。

「てめー、めちゃくちゃ狭いところから喚びだしてくれたなぁ、ああん?しかも空中だぁ?舐めとんのか!!」
「ひいいぃ。舐めるなんてとんでもないですうぅ。」
「覚悟はいいな?」
「あい〜」

真っ青になり覚悟を決めたルーシィに同情するナツだったが、ある事を思い出した。

思い出した瞬間、アクエリアスが叫ぶ。

「ナツぅ!!てめーも同罪じゃあああああっ!!!!星霊を火消しに使うたあ、いい根性してるなああああっ!!!!」


そう、とにかく手当たり次第に因縁をつけてくる星霊であることを…。
気が付けば眼の前には目を回したルーシィと彼女に抱きかかえられたハッピーが濁流と共に流されてきた。
ナツはルーシィを捕まえ、抱え込み、いっしょに流されていく。


なぜナツも巻き込むのか。答えは簡単。彼に任せておけばルーシィは濁流に流されても怪我はしないと彼女は確信しているからだ。
ルーシィいわく、ガラは悪いが、優しい星霊なのだ。

「ま、草原の火も消えるし、今回は喧嘩売んのはやめとくか…」

昔は敵いもしねーのによく喧嘩売ってたなぁ…と、流されているのに、妙に冷静に昔を思いだすナツだった。


おしまい

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