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□星が瞬くそんな夜に
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「ナツ。星見に行こう。」
「……今からか?」
「うん、今から。」
「てか、お前は……はぁ、言っても無理か……」

ナツは、夜も更けた頃に窓からやってきたルーシィにアイアンクロウを喰らわせる。
風呂上がりであるが為に、頭から落ちる雫をタオルで拭いた。

秋深し

そんな言葉が当てはまるような、静かな夜で、つんと冷たい空気は頬をさした。火竜であるナツにとってはどうってことない冷気だったが、折角風呂に入り、いい気分でいたところを邪魔されたせいか少しばかり不機嫌になっていた。
上機嫌で数歩前を歩くルーシィを睨む。

「寒いのはあたしのせいじゃないよ。」

そんな顔をして、ニコニコと笑っている。
だけど何でもないこの瞬間が、ナツには一生記憶に残るような気がした。空を見上げ、星が瞬くこんな夜に願い事をひとつする。

『どうか、叶うならこの時よ続け。』

ルーシィと同じ空を見上げながら大切な事ほどすぐ傍にあるのかもな。なんて珍しく感傷的になったと思う。

いつも自分が抱える一方的な感情は言葉には出来ない。それじゃ伝わらないことくらいわかってるつもりだったが、元々無邪気で鈍いルーシィはきっと自分が怒ってばかりいるように見えているだろう。
でも、今はそれでいい。自分にはやらなければならない事があるのだから。それにルーシィを巻き込みたくない。

ナツは夜空の星からルーシィに視線を落とす。

困難だらけのこの世界でルーシィがいる。それだけの事で今日も生きてゆける。これからも……きっと……

星が瞬くこんな夜にひとりぼっちが二人。誰にも言えない抱えた秘密の痛みを分け合うように、そっと寄り添う二人。
同じ空を見上げてたら、余りにも静かすぎる世界に居心地が悪くなり、何か言おうと口を開くが、そこで動きが止まる。ナツは何て言えばいいんだろうと考え込んでしまったのだ。

「ねえ、流れ星が見たいな。」

ルーシィがナツのマフラーを少しだけ引っ張ると、上目づかいでナツを見上げてきた。そんな姿に心が跳ねる。
冗談で振りかざした指先を空にかざし、少しだけ横に滑らせると光が綺麗な尾を引いた。それはまるで魔法のようだった。
星が瞬くこんな夜に、ふ、と、忘れてた事をひとつ思い出す。流れる星につられるように、言いかけてどくん。と跳ねる鼓動が、腕に伝わり手が揺れる。
新月の中、闇の中一瞬触れた手が、熱く感じたのは気のせいだったのだろうか。

(もしかして、ルーシィは気がついてる?いあ、それは無いな。でも、これはきっとそういう事か、な……)

小さくくしゃみをしたルーシィに、己のマフラーを外し、ルーシィの首に巻き付けつる。
何故か、今だけは勘違いをしてみようと思った。


星が瞬くこんな

こんな夜に


END

memo読みました。様からのリクエストで『星が瞬くそんな夜に』の曲パロをと、頂きました。ありがとうございます。
ifのナツとルーシィは、どぇいきてるうぅな関係に仕上がっているので(←)、時期的には、インフィニティに攫われたルーシィが救出されて、入院中に抜け出してナツに会いに来た。って感じですね(笑)まあ、この後の二人はお医者様にこってり絞られた事でしょう。
ifの性格上、どうしてもナツ側でしか思いつきませんでしたので、こういう感じに仕上がりました。
ご希望に添えたかは分かりませんが、喜んで頂ければ幸いです。

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