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□過去拍手3
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ナツとルーシィはウミガメの産卵調査の依頼を受け、早朝海岸へとやってきた。
この仕事はルーシィが以前から、どうしてもやりたいとナツに駄々を捏ねていたものだ。
騒がしい…良く言えば元気すぎるルーシィが静かに見守らなくてはいけない仕事ができるのかとミラは少々心配だったが、ナツが居れば何とかなるだろうとマカロフが許可してくれたものだった。

「信じらんねぇ…」
「?何が?あ、ナツ、あそこにもいるよ!」

ルーシィが小声でナツを呼び、そっとその場所に近寄るとそこにはウミガメが産卵している真っ最中だった。
ナツが信じられなかったのは、あのルーシィが静かに仕事をこなしている事だった。

「ナツ、この子おっきいから手伝って。」
「ん?おう。」

二人で長尺を持ち、ウミガメの長さを測りヒレや卵の数などの状態を確認する。
一通りの調査を終えたナツとルーシィは、産卵を続けるウミガメを見守りながら静かに過ごす。

「ね、ナツ。ウミガメって涙を流して産卵するのってやっぱり苦しいからかな?」
「…嬉しいからじゃねえのか。」
「うん、そうだね。ふふ。ありがとうナツ。」

実際は溜まった塩分を涙として体外に排出している。と言われているがナツは敢えて話をルーシィに合わせた。ルーシィもそんなナツに感謝をする。

「家族が増えの嬉しいもんね。あたしは…」
「ルーシィ。波打ち際に何か光ったぞ。見てきたらどうだ?」
「え!?ホント!!行ってくる!!」
「おう、気をつけてな。」

話を遮られ少しだけ怪訝な表情をしたが、うん!と元気に返事をし履物を脱ぎ捨てたルーシィはナツが指差した方向へと駆けていく。
ナツはウミガメが産卵を終え海へと向かうのを見届け、波と戯れるルーシィの所へと歩き出す。
ルーシィは静かに寄せる波に追いかけられ、静かに逃げる波を追いかける。そんな様子にナツの口元が緩む。

「見つかったのか?」
「あ、捜してないや。えへへ。でも、こうやって遊ぶの本当に久しぶりだな。」
「そうか。もしかして海で遊ぶのが本来の目的か?」
「あ、ばれた?でもちゃんと依頼は完了したよね?」
「ま、な。」

ナツの同意がとれて嬉しくなったのか。ルーシィは波打ち際を走り出す。
心底楽しそうなルーシィの後を歩きながら付いていくと、痛みを訴える声が聞こえてきた。
駆け寄り、ルーシィの右足を確認すると土踏まずに硝子が刺さっていた。
ナツはしゃがみこみ、ルーシィに自分の身体に体重を掛けさせバランスを取ると、砂を取る為に海水で足を洗い流す。

「よし、抜くぞ。我慢しろよ。」
「よっしゃ!?ばっちこい!!」

気合いの入いった声に吹き出しかけたナツだったが何とか堪え、ゆっくりと硝子を抜く。
ナツは後で然るべき所に処分するために硝子を溶かし、丸く形を整えると海水で冷やしそれをルーシィに渡した。
傷口から流れでる血をもう一度海水で洗い流すとルーシィが微かに顔を歪めたのが分かった。
ナツが頭を下げ、かぱりと口を開けるのをバランスを取りながらも体をかたげて覗きこんでいたルーシィは見てしまった。
ルーシィが拒否の言葉が発せられる前にナツの舌が傷口を舐める。

「…っん…んぎゃ!」
「ぷはっ、んぎゃってなんだよ、んぎゃって。色気ねぇ奴だな。」
「ななな、ナツが急にそんな事するからじゃない!!」
「んだよ、舐めただけじゃねえかよ。」
「くああああ、言わないでええ!!…あ。」
「あ。」

顔を真っ赤にして手で顔を覆ったルーシィは思わずのけ反ってしまい、そのまま海へと身を投げ出してしまった。


タッパーン―――

日が昇り切った浜辺に豪快な水音が響く。





「ったく…変な誤魔化し方すんなよな。萎える…」
「え?なぁにぃナツぅ?何か言ったぁ?」
「別に…」
「じゃあ早く宿に戻ろうよぅ!!皆笑ってる。恥ずかしいよっ!」
「お前が恥ずかしがるたまかよ…」
「何それ酷い!!ね、何怒ってるの?」
「…怒ってねぇ。」
「じゃあ、お姫様抱っこにしてよ。」
「却下!ルーシィなんざ俵で充分だ。」
「やっぱり怒ってるうぅ。うえーん…」

ルーシィの服や髪はナツのお陰で乾いていたが、ナツが何故怒っているのか分からず涙を浮かべる目元は濡れていた。

おしまい

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