BOOK お釈迦さまもみてる
□柏木×祐麒01
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「ユキチ、」
柏木先輩の瞳の中に、祐麒の顔が写っている。
黒曜の瞳は、周囲の光を全て、祐麒の視線すら吸い込んでしまう。
……それは、祐麒が離せないだけかもしれないが。
「こんな時には目を閉じるものだよ」
嫌だ、嫌だ。
こんなこと、したいわけじゃないのに。
柏木先輩の瞳が、祐麒を離さない。
「それとも、このままがいいのかな?」
腰に回された手がするすると上がって、背筋を撫で上げていく。
快感に近いゾクリとした蠢きは、少し身じろぎをした程度では止まってくれなかった。
それどころか、艶めいた吐息を零した唇を塞ぐように、キツく、口付けられてしまう。
柏木先輩のキスは、何も考えられなくなるほど頭が真っ白になる。
嫌なはずなのに、そう言えば自分に嘘を吐いた気になってしまう。
つまりはキスの上手さに翻弄されているのである。
優しく口腔内を掻き回していたかと思えば、強く舌を吸われる。
感じた声も吐息も、何もかもを奪われて、クラリと視界が回った。
「は…っ」
気付けば、祐麒の両手は、柏木先輩の制服を掴んでいた。
そうでもしないと、膝が崩れて床に倒れそうだった。
柏木先輩の手は、祐麒の詰襟のホックを、そしてボタンを外し、顕になった鎖骨を撫で上げた。
快感の涙が滲む視界で、柏木先輩が祐麒の開かれた首元に顔を寄せるのが分かった。
チクリとした小さな痛みが、白い肌を吸い上げられることで生まれる。
どうやらこの人は、祐麒の生徒手帳に書かれた花押だけでは気が済まないらしい。
END
2014/02/24