BOOK 弱虫ペダル

□福富×新開01
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 そう言えば、と思い出したように言ったのは東堂だった。

「皆は進路をどうするのだ?」
「はァ?」
「そろそろ決めねばならん時期だろう。調査票の提出期日も迫っていることだしな、ふと気になったのだ」

 隣に座る荒北とは対照的に、東堂の食事する姿勢は美しいものだ。
 すべてを血肉にするように食べる荒北と、存在そのものが芸術のような美しさの東堂。
 それでも、時折二人は似たようなオーラを見せる。

「ンなモン、ずっと先の話だろうがヨ」
「馬鹿者。ずっとでなく、もうすぐだ。荒北は気楽すぎるぞ」
「福チャンはァ?」

 ビッ、と箸で荒北がオレを指す。
 それを行儀が悪いぞ、と注意してから、東堂もオレに向き直った。
 気付けば、隣の新開もオレを注視していた。

「今のところ、明窓大を希望しているが」
「フーン」
「隼人は?」

 東堂の問いに、咀嚼しながら、ちらりと横目で新開を伺う。
 不思議なことだが、東堂よりも荒北よりも、他の自転車部の誰のものよりも、新開の進路が気になった。

「そうだな……オレも、明窓だ」
「ケッ。どこまで仲良しなんだよ、オメーら」
「良いことではないか、荒北。きっとこれも、フクと隼人の運命なのだろう」

 そう言えば、オレと新開を結びつける繋がりは、一体何なのだろう。

 中学で出会い、同じこの箱根学園に進学。
 そこでインターハイのメンバーになったのだから、強豪である明窓大学を希望しても、何らおかしいことはない。

 だがもし、新開がオレと同じ明窓大を希望しなかったら?
 オレたちの関係は、どうなるのだろうか。

 隣に新開がいない将来を想像して、臓腑の奥がスッと冷えた。
 腹の奥から、ゆっくりとオレを侵食してゆくもの――

 明確に解る。
 恐怖、だ。

 新開のいない将来が怖い。
 ずっと隣にいたから、それがいない将来が考えられない。
 新開がいなければきっと、オレはオレでなくなってしまうだろう。
 それくらい、オレの中での新開の存在は大きかった。

「つーか新開ィ、オメー、受かンのかァ? 福チャンは頭いいけどよ」
「受かるさ」

 何としてでも、と付け足された強調の言葉に、食事を終えて立ち上がった新開を仰ぎ見る。

「靖友に寿一のアシストを取られっぱなしだったからな。こんなチャンス、逃せるわけがない」
「ケッ、仲良しなことで」
「尽八の言うとおり、運命なのかもな」

 運命、か……。
 それも悪くないと思って、何を考えたのだとそれを打ち消す。
 今まで運命などは信じず、全て実力で掴み取ってきたはずだ。

 だが、新開とならば、運命などというものでも構わない。
 それが脆弱なものならば、オレ自身の力で係わりを深くしてやる。


END

2014/07/01〜2014/08/16


後書き

 冒頭で若干荒東を匂わせたつもりです←

 難しいな、福新
 なんか、ヤッたりイチャついたりしてくれる感じがしねぇorz
 福ちゃんは鉄仮面だし、新開さんはそんな福ちゃんを一途に思い続けるような気ぃしか…;
 福新を福ちゃん視点で書いたのが無茶、ということで!

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