BOOK 弱虫ペダル

□新開×荒北01
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「新開ィ」

 呼ばれてパッと顔を上げると、衝撃を鼻に食らった。
 次々とオレに向かって飛んでくる、小さなもの。
 2個目からは咄嗟に手を出して、受け止める。

「やるヨ」
「どうしたんだ? こんなにたくさんのパワーバー」
「どうしたじゃねぇヨ。オメェの誕生日も忘れたのか、ボケナス」
「誕生日? あぁ……」

 得心して、ようやくオレは手を打った。
 本日7月15日は、オレの誕生日だ。

「じゃあ、このパワーバーはプレゼントだと思っていいのか?」
「さっきからそう言ってンだろ、ボケナス」

 よくよく見れば、パワーバーは全てチョコ味とバナナ味だ。
 数えてみれば、18個。
 オレ、愛されてるなぁ……。

 立ち上がって、すっかり帰り支度を済ませてしまった靖友に近づく。
 偶然か必然か、現在部室にはオレたちの他には誰もいない。

「ありがとな、靖友」
「おい、新開ッ」

 ぎゅっと抱きしめると、慌てたように声が上がる。
 しばらく暴れていたが、不意に大人しくなって小さな声が耳に吹き込まれた。

「誕生日、オメデト……」
「靖友っ!!」

 思わず、ここが部室だということも忘れて口付けてしまう。
 2度3度軽く重ね、唇を割り開く前に、スルリと猫のように逃げ出された。

「ここまでだ、泉田が来る。その緩んだ顔、引き締めていろヨォ?」

 予告どおりに、出て行く靖友と入れ替わりに、泉田が入ってきた。
 なぜ分かるのかと以前聞いたことがあるが、曰く、「足音が違ェだろ」らしい。

「新開ィ。続きはメシ食った後、部屋でな」

 それって。
 それが意味するものって。

 ニヤリと笑った口元に、オレは真っ赤になるしかなかった。


END

2014/07/19

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