BOOK 弱虫ペダル
□東堂×巻島01
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図書館で笹の枝を見つけて、もうそんな季節なんだと感じた。
もうすぐ、彼の誕生日がやってくる。
高校2年で出会って、全力で戦い、全力で愛した人間だ。
山神と呼ばれたオレに劣らず、時には勝っていた登坂能力。
オレとは対照的な、極端なまでに車体を揺らす登りに、初めて見たとき、目を奪われた。
巻ちゃんが渡英してから大分経つというのに、オレは未だにこの空白感に慣れない。
時たま出るクライムレースでも、無意識の内にあの緑の髪を捜してしまっている。
「会いたいよ、巻ちゃん……」
イギリスへ行くということを伝えられたとき、なぜオレは心中を打ち明けなかったのだろうか。
巻ちゃんの邪魔になってしまうことも、もちろん懸念した。
だがそれ以上に、この想いを拒絶されることが恐ろしかったのだ。
自分で選んだ選択肢のはずだった。
それでも、苦しい。
「あの、短冊をもらえますか?」
「ええ、どうぞ」
カウンターの司書さんも、なかなかの美人だ。
それでも、巻ちゃんに対するように、心を惹かれたりはしない。
『会えますように。東堂尽八』
誰が、誰に、なんてことは一つも書かなかった。
願えば叶うなんて思ってはいない。
ただ、感情の吐き出し口にしただけ。
「……オレが好きな緑は、こんなものではないよ」
出しなに、笹の葉を指で摘んだ。
いつか、巻ちゃんの髪に触れたときを思い出しながら。
END
2014/07/06
後書き
巻ちゃん祝誕小説!!
…とか言いつつ、巻ちゃん出てねぇなorz
なんとなく、しんみりしたものを書きたい気分だったんだ、うん
巻東でもそれほど不自然じゃねぇな……
巻東派になったら、タイトル改変するかも