BOOK 弱虫ペダル
□今泉×坂道02
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――「い、いいいい今泉くん、今度の、日曜日、一緒に出かけない?」
そう小野田に誘われて、浮かれた自分が馬鹿だった。
痛感したのは、行き先を知ってからだ。
ラブヒメ。
正式タイトルは、『恋のヒメヒメぺったんこ』。
そのイベントが、アキバで開かれるという。
運良くも久々のオフと重なり、俺の家に誘おうと思ってたが、キラキラと瞳を輝かせる小野田に、断りきれずに一緒に行くことになった。
「うわ〜、うわ〜っ///」
「はぐれるなよ、小野田」
「あ、うん。ケータイあるし、大丈夫!」
「そういうことじゃねぇよ……」
え? と首を傾げて上目遣いで見上げてくる小野田の左手を掴む。
「ちょ、わわわ…ッ」
「なんだよ? はぐれたら困るだろ」
「そうだけど…」
「それに、デートだろ、今日は。別に誰も他人のことなんか、気にしてやいねぇって」
「そう、だね……」
小さく頷いたというのに、小野田は手を離した。
無理矢理にでも捕まえようとすると、再び、指が触れる。
元通りの繋ぎ方じゃない。
指を絡めた、いわゆる恋人つなぎで――
「い、いいよね……」
あぁ、この混雑の中、他人の手まで気にしてる奴なんざいねぇさ。
◇ ◇ ◇
「ヒーメヒメ、ヒメ、好き好き大好き、ヒメ、ヒメ…」
風呂場に鼻歌が反響する。
たまには、こんな休みもいいかもしれねぇな。
END
2014/06/13