BOOK 弱虫ペダル
□手嶋×青八木01
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珍しく青八木が遅刻した。
ホームルームが始まっても来ないから、おかしいと思って机の下に隠れて、メールを打つ。
送信ボタンを押そうとして、開いたドアに金髪が見えたので、意味のなくなった文面を終了させてケータイを閉じる。
そろりそろりと教室に入ってきた青八木は、これまたそろりと担任に頭を下げて、席に着いた。
「青八木、大丈夫か?」
「……純太の、バカ」
「あー、やっぱり昨日の……」
恨みがましい目とガラガラに掠れた声は、今日部活が休みだからと溜まった欲情が暴走して、青八木の細い躰を貫いたからだろう。
「お尻も腰も痛くて、自転車乗るの、大変だった」
視線だけで何を言いたいか分かるのに、それでも言葉に出してじとりと睨んでくるのは、恥ずかしさもあるからなのだろう。
「悪かったって。でもさ、久しぶりだったし……昨日の青八木、すっごくエロかったからつい」
暴走しちまった。
後半部分を潜めて告げれば、振り上げられた手が顔面に飛んでくる。
しかし力のないそれは、ペチンと小さな音を立てただけだ。
「あーでも、ほんとツラそうだな。今日の体育は休めよ。先生には俺が説明するしさ」
「(コクリ)」
八の字に下がった眉で頷いた青八木は、それこそヘロヘロの顔で机に突っ伏した。
気だるげに零された吐息と、情けなく下がった眉。
……うん、これは。
「……なに?」
「いや……」
訝しげに問うた青八木に、声を潜めて「可愛いなと思ってさ」言うと、バカと返された。
まぁ、俯いた耳が赤く染まっていたからいいんだけど。
END
2014/03/27〜2014/03/30