BOOK 黒子のバスケ2

□火神×黒子05
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「ごちそうさまでした」

 静かに箸を置いて、手を合わせた。

「とても美味しかったです」
「そうか、なら良かった」

 一足先に食べ終わり、テーブルに頬杖を突いてボクが食べるのを眺めていた火神君が、目を細めて笑う。

「お腹いっぱいです……」

 本当に今日はいつも以上に食べた。
 それもこれも、火神君の料理が美味すぎるせいです…なんて。
 火神君は「それだけで足りるのかよ?」と言うのですが、ボクが小食なのを差し置いても、火神君は大食漢だと思いますよ。

 空になった食器をキッチンに運ぼうと立ち上がると、同じく立ち上がった火神君に制止される。

「客に――つーか、今日誕生日の奴に片付けなんかさせる訳ねーだろ。大人しく座ってろ」
「でも…」
「いいから」

 食器を奪われ、椅子に座らされるが、ボクはすぐにまた立ち上がって火神君の後を追った。

「だから手伝わなくていいっつーの」
「傍にいるくらいは許されるでしょう?」
「それは、まぁ……」

 刷り込みされた雛鳥のように、火神君のあとに続く。
 傍にいたいのを分かってくれない火神君はバカガミというか、ただのニブチンですね。

 カウンターキッチンの対面で、火神君が食器を洗っていくのを見る。
 さすが一人暮らしのボンボンですね、手つきが慣れています。
 火神君ならきっといいお嫁さんになるでしょう。

 見とれている間に、お皿は濯がれて籠へ移動し、水しぶきの飛んだシンク周りまでもがきれいに磨かれていた。

「火神君、ボクのお嫁さんになりませんか?」
「は? 何言ってんだバカ、嫁ならお前のほうだろうが」
「ッ……」

 サラッと返されて、顔に熱が集まる。
 カウンター攻撃を食らうとは思っていませんでした……。
 こんなの、反則ですよ。

「ずるい……」
「あ? 何がだよ」

 頬に熱い何かが押し付けられた。
 水色のマグカップ。
 甘党のボクのためにミルクと砂糖がたっぷり入ったコーヒー。

 ボクが頬の熱を冷まそうとへたり込んでいる間に淹れたのだろう。
 こういうことをサラリとするのもズルいのだ。

「つか、いつまでそこに座ってんだよ。床は冷えるぞ」

 来いよ、と片手で呼ばれて、ソファーに移動する。
 もはや定位置となった、火神くんの隣。
 斜めに座って背中を火神くんの肩に預けると、ホッとします。

 この場所は、ボクだけのもの。
 誰にも、2号にすら渡したくない。

 2号のマネをして顔を火神君に擦り付けると、「なんだよ」を頭を撫でられる。

「甘えています」
「ぷ…っ、ははっ、来いよ」

 大きく開かれた腕に甘えて、膝を跨ぎ胸に凭れる。
 部活で練習をするのも楽しいけれど、たまに齎されるこんなひと時は――

「すごく、幸せです」


END

2013/01/20〜2014/07/31

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