BOOK 黒子のバスケ2
□日向×伊月06
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「ん…っ」
目覚めたときに感じたのは、オレに絡まる手足の感触。
隙あらばもう一度閉じてオレを眠りの世界へ引き戻そうとする瞼をこじ開け、視線を横へやる(このくらいの距離ならば眼鏡がなくても問題ない)。
視界いっぱいになるほど近くにあったもので、眠気はいっぺんに覚めた。
薄く開いた唇。
艶かしいそこからは僅かに息が漏れ、オレの頬を擽る。
大きく心臓が跳ねて――
「うにゃむにゃむー……」
部屋の対角線上でコガが変な声を上げた(恐らくは寝言だろう)。
無意識のうちに僅かしかなかった距離を詰めていたのに気付く。
誰かが起きるかもしれない――そんな危惧が一瞬で胸中を過【よ】ぎったオレは、咄嗟に伊月の華奢な躰を突き飛ばして距離を取った。
「んぅ…?」
ぼけやた目が、オレを貫いた。
試合中には鋭い光を抱く瞳は、寝起きの気だるさを伴って、瞼によって何度も隠される。
「あー、ひゅうが。おはよー」
「お、おぅ……」
おはよ、と短く返し、気まずさに目を逸らす。
けれど、それもわずか1秒で潰【つい】えた。
ふぁぁ、と情事を思い出すような濡れた声の欠伸。
赤い舌が、ちろりと誘うかのように、覗く。
「……ッ」
「あれ、どしたの、ひゅうが」
「い、いや。何でもねぇ」
「ふぅん。なぁ、もうおきるか?」
ケータイで時間を確認した伊月は、そうオレに問いかけた。
少し早い時間だけど、そろそろ起きたほうがいいかもな。
海合宿で朝に弱い奴がいるのもわかったし、そいつらを叩き起こす時間も考えたら。
「起きるわ」
「じゃあ、オレも」
洗顔セットを持って、二人きりで朝の空気が張り詰めた廊下を歩く。
山だからか、朝だからか、涼しい空気が気持ちいい。
「ねむた……」
「お前ももう少し寝ててよかったのに」
「んーでもなぁ…」
キュッと蛇口を捻って、東京よりも冷たい水に手を浸す。
合宿ももう4日目ともなればここの温度にも慣れてきたが、水の冷たさはいい意味で慣れない。
フワリと、また伊月が欠伸をした。
うっかりそれを見てしまって、なんとも言いようのない背徳感に襲われる。
冷たい空気とエロスのギャップとか、多分そんなもんなんだろうけど。
やっべぇな、オレ。
続く合宿で熱を発散できてないせいか、思考回路が変な方向に行ってる。
キャプテンとして、少なくともこの合宿中は控えなくてはと思っているのに。
あいつがオレに抱きついて寝たりするから。
気まずい熱を冷ますかのように、勢いよく顔に水を叩きつけた。
END
2013/08/23〜
2014/06/15
後書き
そろそろ夏の山合宿のころだよなーと思って書き始めたのが今になって完成するとかどれだけかかるんだよ自分……orz
しかも文才ないのが露呈してる
続編として、結局我慢しきれなくて襲っちゃう日向を書きたいなと思わなくもない
お目汚し、スミマセンでした