BOOK 黒子のバスケ2
□緑間×高尾01
1ページ/3ページ
「起立、礼」
頭を下げて、再び席に着こうとしたら、低い真ちゃんの声に呼ばれた。
いつものように軽い笑みを浮かべて振り返ると、真ちゃんはオレの手を掴んで無理矢理立たせ、教室を出てゆく。
「ちょッ、真ちゃん!?」
「黙るのだよ」
え何この扱い、酷くねー? などと思ったが、強く引かれた拍子に舌を噛んでしまったので、不承不承ながらも言われたとおりに黙った。
急に真ちゃんが立ち止まった。
広い背中にぶつけてしまった鼻を押さえながら、扉を開けて中に入った真ちゃんに続く。
長い間締め切られていた教室の埃臭い空気が、夏の初めの気温でむわっとかき回される。
軋むドアを音を立てて閉めた真ちゃんは、強い力でオレを奥へと促した。
「どーしたの、真ちゃん」
「少し、黙っていろ」
うっわ、怖ぇぇ…。
オレ何かエース様の機嫌を損ねるようなこと、したっけ?
からかうようなことは何度も言っているが、ここまで機嫌が悪くなるとは思えない。
空き教室の一番後ろまでオレを引っ張って、真ちゃんは眉根に皺を作った。
「真ちゃん?」
「…黙っていろと言っただろう」
凭れた背中を壁から少しだけ離して真ちゃんの顔を覗き込めば、地を這うような低い声になった。
顔の両側に勢いよく手を突かれて、思わずオレは目を見張る。
いわゆる壁ドンの状態で、そのまま深く口付けられた。
肉厚の舌が侵入して、好き勝手に口内を蹂躙される。
引っ込んだ舌を反射的に追いかけると、先っちょを吸い上げられた。
たったそれだけで、腰が砕けそうになってしまう。
吸われて、甘噛みされる。
ただそれだけのことなのに、小さなリップ音を立てて唇が離れていったときには、真ちゃんに縋りついて立っているのがやっとだった。