BOOK 黒子のバスケ2

□青峰×黄瀬03
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 夜の道を疾走する。
 胸が揺れて痛いから、抱えながら。

「はぁ……はぁ……っ」

 実はオレと青峰っちの家はそう離れていない。
 それなのに青峰っちの家の近くのストバスコートに着いたときには、息切れしていた。

「体が女の子になると……、体力も女の子並みになるんスかね……」

 ケータイを取り出して時刻を確認。
 まだそれほど遅い時間じゃない。

 コールしかけてメールに切り替える。
 高くなったこの声じゃ、イタズラかと思われるかもしれないから。

《出て来れないっスか?》
 そうメールを送って3分もしない内に、青峰っちが公園の入り口に現れる。
 夜の闇に黒い肌が溶け込んでいて、白いタンクトップだけが浮かんで見えた。

 コートをぶった切って近づいてくるのを、オレはコートの奥にあるベンチに座って待つ。

 と、青峰っちが3分の1ほどの距離を残して立ち止まった。
 それをオレは吐息だけで呼ぶ。

 残る何メートルかを青峰っちは凄まじい勢いで詰め、誰何する。

「分からないっスか?」

 長くなった髪を隠していた帽子と、伊達眼鏡を取る。
 そしてまっすぐに青峰っちを見つめて笑んだ。

「き…せ…?」
「当ッたり。よく分かったスね」
「匂いがお前だったからな…。でも、何でだ?」

 匂いってアンタ犬スか…。

 オレが呆れてる間に、青峰っちは「幻覚か?」なんて言って頬っぺた抓ってるし。

「幻覚でも夢でもないスよ。オレはちゃんとここにいる。まぁ…この姿なのは内緒ってことで」

 ちゃらけてそう言うと深く眉間に皺が刻まれるが、「目的はちゃんと教えるっスから」の言葉で解かれる。

「とっとと言えよな」

 ベンチにどっかり腰掛けた青峰っちと入れ替わるように立ち上がって、向かい合った。

 逸る心音を抑えて深呼吸。
 息をする度に胸が上下する。

「青峰っちのことが、好きっス」

 ボールをぶつけられたあの日から、ずっと。
 オレの恋心は青峰っちに持っていかれたまんまなんだ。

 心臓が、飛び出てしまうんじゃないか。
 そう錯覚するぐらいに、脈拍は早い。

「知ってるっつーの、そんなこと」
「へ……?」
「練習中とか、どんな目でオレを見てるか自覚ねーのかよ」

 フッと、青峰っちは嘲笑するような声を漏らした。

「あんな目で見られたら、誰でも気付くっつーの。とっくに絆されてるよ」
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