BOOK ワールドトリガー

□佐鳥×出水01
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 プシュリと音を立てて起こされたプルトップ。
 中身はチューハイで、アルコールはまるで大人の象徴だ。

 出水先輩は、誕生日を迎えた半年くらい前からお酒を飲むようになった。

「せーんぱい。それ、おいしい?」
「あー……まあまあ」
「ふうん」

 まあまあとか言いつつ、最近ビールとそればっかり買ってくるから、それなりに気に入っているみたい。
 果汁45%の、オレンジのチューハイ。
 でも先輩が好きなのは、オレンジじゃなくて、みかん。

「いいなあ……。ね、先輩。一口ちょーだい?」
「何言ってんだ未成年。あと数ヶ月だろ、そんくらい待て」

 缶の飲み口を唇に当てながら笑う表情が、恋人に対するものじゃなく、庇護すべき未成年への顔で。
 ……何か、もやっとする。
 先輩、おれは確かに未成年だけど、その前出水先輩の彼氏だよ?

「じゃあ、飲まないから。味見だけさせて?」
「あ?味見?」

 きょとんとしてる先輩から缶を取り上げて、炬燵の上に置く。
 多少行儀悪くてもいいや、炬燵の天板の上に膝を突いて、そのままキスを仕掛けた。

「口、開けて」

 ふにふにと口唇を触れ合わせてからそう指示すると、ゆっくりと迎え入れられる。
 軽く香る、柑橘類。
 あー、いいな、この味おれも好き。

「美味しいね」
「だろ?」

 にひひっと先輩が笑う。

「待ってるからさ、お前が成人すんの。夏になったら、一緒に飲もうぜ」
「……うん」

 早く大人になりたいなと思う。
 先輩と一緒に飲みたいというのもあるけど、早く隣に並べるようになりたい。
 おれは先輩の彼氏だけど、まだ未成年として守られてる気がする。

「あーあ、おれも早く大人になりたいなー」
「すぐだっつの、そんなの」

 そう、夏なんて、きっとすぐだ。


END

2016/03/12

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