BOOK ワールドトリガー

□太刀川×出水01
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「じゃーねぇ、太刀川さん、いずみん」
「お先に失礼します」

 クリスマスの前夜。
 場所は決して夜景の綺麗な場所ではなく、警戒区域にほど近い太刀川さんの部屋。

 隊のメンバーでクリスマスパーティがしたいと言い出したのは、柚宇さんだった。
 面倒臭いと渋る太刀川さんに、便乗してやりたいと騒いだのはおれ。
 実家でホームパーティーがあるのだと嫌がる唯我まで巻き込んだのは、やっぱりおれにとってもクリスマスは大切な日だったから。
 決してその理由は、太刀川さんには言えないけど。

 ゲームだ何だで散々騒いで時間が遅くなったため、柚宇さんは唯我を付き添いに帰らせて、リビングに戻ったおれは深く溜め息をつく。
 飲み食いした物たちの残骸と、ソファーでグダリと寝転ぶ太刀川さん。
 隊室ならいくら散らかしたままにしていても見かねた職員さんが片付けてくれるけど、ここは太刀川さんの部屋。

「ちょっと、太刀川さんも手伝ってくださいよ」

 食料品と一緒に買っておいた透明のゴミ袋に、残骸をポイポイ放り込んでいく。
 空っぽになったジュースのペットボトルは、後で中を濯がないとゴミに出せない。

「もー、太刀川さんってば」
「後でいいだろ、めんどくせえ」
「そう言っていつもやらないでしょアンタ」
「いいからこっち来いよ」

 もう、全然良くねえ。
 結局後で片付けるのはおれになるんだから。

「はいはい、何すか?」

 とりあえず、普通ゴミだけは纏めてしまおう。
 残っていた数個のゴミを袋に詰め込んで、口を縛るのは軽くに留めておく。
 どうせまた捨てる物は増えるんだから。

「何すか、太刀川さん」
「んーとりあえずこっち来い」

 ああもう。
 じんわりとする予感は、いいものか悪いものか。

 ソファーの座面に起き上がった太刀川さんの前に立って、見下ろす。

「お前もこっち」
「う、わっ」

 パーカーのポケットに突っ込んでいた手を引っ張られて、広い座面の上に転ぶ。
 そのまま引き寄せられて、おれは慌てた。

「ちょっ、待っ……まだ片付け終わってないんだって」
「後でいいって言っただろ」

 ああもう、これはズルい。
 表面だけ合わせた唇で喋んないで。

「俺はずっと我慢してたんだよ」

 太刀川さんの、息も、声も、何もかもが熱い。

 グッと体の距離が近くなって、深く、重なる。
 唇の形が変わるほど強く合わせられて、舌がおれのものに絡んだ。

 背中に回っていたはずの手が降りて、腰の辺りでさわさわと動く。
 あ、そこはダメ。

「ん、んん……」

 服の中に手が入って尾骶骨付近を撫でられると、背中がゾクゾクしてしまう。
 もうこれは、戻れない。

 座面に突いて体重を支えていた片手を太刀川さんの背中に回し、キスに応える。
 また深さが増して、おれは息苦しさで唇の隙間から酸素を求めた。

 太刀川さんのキスは、何というか、ズルい。
 元々の経験値があるだろうから差は当然なんだけど、弱いところばかり責められて、オレは体格差からロクに反撃できずにいる。
 それでも一矢報いたくて、上顎を舐める舌を捕まえてヂュっと吸った。

「出水、ベロ。ベーってして」
「……は、ぁ。え……はい」

 酸素の足りない呼吸で返事して、言われた通りに舌を差し出す。
 と、その舌を吸い返されておれは震えた。

「……煽った覚悟はしておけよ」

 低められた声は、欲を隠せていない。
 やっべえ、超やべえ。

「立てるか?」
「……うす」

 立てない、と言ったらどうなってたんだろう。
 小さな疑問が浮かぶが、過程が違っただけで結果は一緒だっただろう。

 自力で移動してベッドの縁に腰掛け、太刀川さんがサイド小棚からローションボトルとゴムを出すのを見守る。

「……シャワー行くかって、聞かないんすね」
「んな余裕、あるかよ。どうせお前も、自分でケツ洗って来てんだろ」

 事実、その通りだった。
 予定があって太刀川さんと会う時はいつもそうしてたし、推測するのは簡単だったと思う。
 それでも、言い当てられておれの顔は真っ赤になった。

「出水、まだるっこしいから自分で服脱げ。全部」
「出水りょーかい」

 命令形に任務中の口調で返したのは、照れ隠しだった。
 バレバレだったみたいで、太刀川さんは横目で脱衣中のオレを見てフッと笑う。

 セーターとシャツを脱いだ太刀川さんに引き寄せられて、キスから仕切り直し。
 火種が燻ったままの身体は、簡単に炎が起きる。

「太刀川さんも下、脱いでよ。……舐めたい」
「今度な」
「……やだ」

 片手を回していた肩から外して、ベルトを手探りでまさぐる。
 見えないし、太刀川さんが邪魔をするようにまたキスをしてくるから、なかなか外せない。

「おいおい、勘弁しろって」
「やだ、舐めたい」
「お前……いつもは全くそんなこと言わねえくせに」

 太刀川さんの言う通り、自分から舐めたいと言ったことも、実際に舐めたことも少なかった。
 いつもはキスをして、奥の孔を濡らされて広げられて、そして交わる。
 太刀川さんが開拓の片手間におれのを舐めることはあっても、おれが太刀川さんに奉仕したことはほとんどなかった。

「あんま上手く出来るとは思わないけどさ……」
「分かった分かった。けど時間惜しいから、同時にな」

 跨がるように指示され、従うと違うと肩を叩かれた。
 ケツを太刀川さんに向けて跨がれと。

「……っ」

 剥き出しの尻に、太刀川さんの熱い手が触れる。

 おれ自身ですら見ることの出来ない場所を、自ら眼前に晒してる。
 そう思うと羞恥で顔に血が集まった。
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