BOOK ワールドトリガー
□エネドラ×ミラ01
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彼の手の温もりを、床に飛び散った血液の赤い色を、私はまだ覚えている−−。
切り落とした彼の左手、そこに留められた泥の王(ボルボロス)。
最大の愛情を持って、ゆっくりと外した。
私は彼のことが好きだった。
聡明なあの子が、澄んだ目をしたあの子が。
でも残念ね、私の愛した彼は、もうどこにもいない。
エネドラ殺害は、本国とハイレイン隊長からの命令だった。
手段は任せる、そう言われていた。
だから、あれは私が彼に贈った、最後の愛。
−−残念ね、エネドラ。
「残念だったわ」
ねぇ、エネドラ。
私はまだ、貴方を想っているのよ。
髪をここまで伸ばすのに、何年かかったかしら。
少しカールした私の髪は、彼のように綺麗ではない。
「好きよ、エネドラ。好き、だったわ……」
私、来週ハイレインと結婚するの。
そう、彼を想って伸ばし続けた髪に告げた。
END
2015/10/06