BOOK 黒子のバスケ

□高尾×緑間01
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 ドサッとオレの周りに色が舞った。
 赤やピンクをはじめ、様々な色の小さな箱、袋たち。

 床に座るオレにそれらをぶちまけた張本人は、狂気的な色を瞳に宿して、先程まで溢れ出しそうなほど中身の入っていたエコバッグを投げ捨てた。

「たか、お…?」
「全部あげるよ。真ちゃん、甘いもの好きだもんね」
「なんてことを…」

 一拍遅れて我に返ったオレは、とりあえず一番上の――自分の頭の上の袋を手に取った。
 膝の上から転げ落ちたものたちは、飾りが取れたり、崩れてしまったりと無残な形になってしまっていた。

「全部食べちゃって」
「何を言っているのだよ」
「だってさ、」

 明らか本命じゃん。
 そうつまらなさそうに高尾は呟いた。

「あ、これは義理だからいいや」

 伸びてきた手が10に満たない数を摘み上げていった。
 それでもオレの膝の上とミニテーブルにはかなりのチョコレートが乗っている。

「真ちゃん以外に恋愛感情寄せられてもいらねぇし。つっても“人事を尽くし”たものだし? 捨てるのはさすがにどーかと思うわけよ」

 高尾の指が包装を解き、丁寧に作られたであろうチョコトリュフをひとつ摘み上げた。

「ほら、あーん」
「むぐッ」

 無理やり口内に捻じ込まれたチョコレートは、少し苦かった。
 恐らく高尾の好みをリサーチしたのだろう。

「おいしい?」
「あ、あぁ…」
「よかった。ぜーんぶあげるね」
「だが…」

 オレは背後に置いた袋を高尾の眼前へ持っていった。

「オレも自分の分があるのだよ。食いきれん」
「へぇ…」

 また、高尾の瞳が狂気に染まった。

「見事に本命ばっかしじゃん」

 笑って言うが、目が全然笑っていないのだよ。
 鼻で溜息を吐いて、言葉を投げた。

「オレに食わせるのだから、それは全部オマエが食うのだよ」
「は?」
「義理だと渡されたが、オマエが本命と言うならそうなんだろう。オマエから以外の恋心など、いらん」

 オレは高尾の狂気を分かって受け入れたのだ。
 高尾と一緒に狂ってもいいとすら思っている。

「真ちゃん…っ」

 コイツとならば狂っても幸せでいられるだろう。
 頭の片隅でそんな事を思いながら、近づいてくる唇を受け入れた。


END

2013/03/02

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