BOOK 黒子のバスケ

□火神×黒子08
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 ふと問題集から顔を上げると、黒子はグラスの縁を唇に当てたまま固まっていた。

「おい、」
「……ぁ、すみません。分からないところでもありましたか?」
「そうじゃねぇよ。おまえが上の空だったから、どうかしたのかと思っただけだ」
「すみません、少し……」

 黒子は言葉を切ってジュースを飲んだ。
 そして何もなかったように、ソファーに背中を預ける。

「あと半分ですね。頑張ってください」
「逃げんなよ」

 そう言うと、黒子は何のことを言ってるのか分からない、というふうに首を傾げて見せた。

「すっとぼけんな。答えてねーだろ」
「……」
「答えろよ。ミスディレも禁止」
「――言います。けど、」

 嫌わないでくださいね。
 音のない言葉が紡がれる。
 オレはそれを鼻で笑い飛ばして、嫌ったりしないことを示した。

「…少し、寂しくなったんです」
「へ?」

 俗に言う、三角座りの姿勢で膝に頭を落として黒子は呟く。

「今日は雨が降っているから……。雨の日は、自分だけが周囲から隔絶されたような気がして……寂しくなるんです」

 あぁ、それで。
 ようやく思い当たることがあって、内心膝を打った。

 時たま――本当に時たま、黒子からのスキンシップがある。
 それは決まって雨が降っている日だったような。

 今日も雨が降っているというのに、それがないということは――

「オレに気ィ遣っていたのか」

 頷くようにも見える動きで、黒子はますます深く項垂れた。

「あー、やべぇ」

 知らず知らず、口に出していたようで、黒子がバッと顔を上げる。

「可愛すぎんだよ、お前。…もっと好きになった」

 黒子の顔が、ジワジワと耳まで朱に染まった。
 呆然と固まる黒子を造作もなく抱き上げて、腰を跨ぐように膝の上に座らせる。

「すげー好き」

 額、瞼、鼻先、両頬、そして唇にキスをする。
 優しく、啄ばむように。

 肩に回された手から力が抜けて、強張っていた体がふにゃんとなった。

「かがみくん……」

 好き。
 そう唇が動く。

「オレもだ」

 おまえの不安ならオレが取り除いてやるからさ。
 何かあったら言えよ?


END

2013/03/13〜2013/03/14

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