BOOK 黒子のバスケ
□火神×黒子04
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*伊月視点
「お先に失礼します」
「「「「うおぉぉぉう!?」」」」
雑談――といえば聞こえがいい、実際には中身のない話――で賑やかな部室に、さほど大きくないがよく通る声が響いた。
存在を意識していなかった皆は、一様に驚いて声を上げる。
日向と話していてイーグルアイを使っていなかったオレも、例外ではなく。
首がもげそうな勢いで振り返ったオレの目に映ったのは、黒子本人よりも、黒子が抱えているいつもよりも大きいカバン。
「黒子、その荷物何なんだ?」
同じ疑問を持ったらしい日向の問いに、黒子はあっさりと答えた。
「着替えとか本とか…ですね」
「「着替え?」」
見事にハモったオレと日向に、黒子ははにかんでみせた。
「はい。火神君の家にお泊りしてご飯作ってもらうんです」
「黒子【コイツ】今日誕生日だ…ですから」
黒子の言葉を補足して、火神も答える。
「マジかよ?」
驚愕の声をコガが上げた。
うわ、マジか。おめでとー。などの声が部室を充たす。
水戸部は黒子の頭を撫でてるな。
「ありがとうございます」
それでは。と黒子は頭を下げた。
「お先に失礼します」
火神もそれに続いて扉をくぐった。
二人が去った部室には、ざわめきの余韻が残っている。
「メシかー……」
いいなー。と、日向が呟く。
「作ってやろうか? 日向の誕生日に」
「お、マジ?」
振り向いた日向の顔が嬉しそう。
「日向は料理、からっきしだもんな」
「うっせー、だアホ。それにしても、」
日向が言葉を切る。
「黒子も火神も、言やぁいいのによ」
「だよねー」
オレたちの視線は、窓から見える後輩二人の背中へと向いた。
END
2013/01/24〜2013/01/27