BOOK 黒子のバスケ

□火神×黒子03
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「黒子。…おまえ、何か欲しいものとかあるか?」
「……え?」

 並んで歩く、暗い帰り道。
 火神君は前を向いていて、少し真面目な声に気づけなかったボクは不真面目に答えた。

「四次元ポケットは欲しいと思いますよ?」
「は?」
「本って嵩張るし、重いんですよね……持ち運ぶのが大変なんです。保管する場所も要りますし」

 でもそんなことは、四次元ポケットがあれば、全て解決できてしまうんです。

「悪ィ…現実に存在するモンで頼む」
「分かりました。でも、なんで急にそんなことを?」

 頭一つ分よりも高い位置にある顔を見上げて、驚いた。
 ちょうど向かいから来た車の明かりが火神君のほんのり赤い顔を照らしたのだ。

「……もうすぐおまえの誕生日だろ」
「――あ、」

 1月の半ばを過ぎた。
 ということは、月が終わるまで――ボクの誕生日が来るまで、あと十日と少しということだ。

「プレゼント何がいいかと思ってよ」
「火神君……」

 どうしましょう。
 嬉しすぎて、顔が赤く……。

「だから、何が欲しいか、教えろ」
「――火神君の作ったご飯が食べたいです」
「へ?」
「ご飯。ボクのためだけに作ってほしいです」

 ウィンターカップ初戦を突破したときにした祝勝会で火神君の手料理が食べれると思ったのですが……。
 未練を断ち切るように、ボクは小さく強く頭を振った。

「いいぜ」
「ありがとうございます」

 大きな力強い手が、ボクの髪を掻き回す。
 ちょっと痛いくらいの力なのに気持ちよくて、ボクは目を細めた。

「たしか――」

 火神君はカバンからぐしゃぐしゃになった部活の予定表を出して、「ゲッ」っと呻く。

「時間いっぱい練習入ってやがる……」
「ホントですね」
「となると、遅くなるな……」

 宙に視線を泳がせた火神君は、名案を思いついたようで、半歩後ろのボクを振り返り。

「その日、泊まってけるか?」

 唐突だったので、ボクは一瞬キョトンとしてしまい、それから微笑んだ。

「はい、母の許可を貰うことができれば」
「んじゃ、今日貰ってこい。『ダメでした』とか許さねーからな」
「はいっ」

 嬉しさが頂点に達して、ボクは思わず火神君の腕に抱きついた。


2013/01/19〜2013/01/20

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