BOOK 黒子のバスケ
□黄瀬×黒子03
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キャアキャアと黄色い声が、いくつもオレを追ってくる。
雑誌の発売日ってだけでこの騒ぎだ。
「待ってよ黄瀬君!!」
「サインして!!」
「メアド教えて!!」
「あッ、ズルい! あたしも!!」
あのね、さすがにメアドはマズイんスよ。
そんなこと、ピンクのオーラを発する集団は、聞いちゃあくれない。
いつもならあの集団にも笑顔で対応できるんだけど、いかんせん、今日は調子が悪かった。
オレの元気の源である、あの水色に会ってない。
「黄瀬君」
今日何回も聞いた、でも全く違う、透明な水色の声がオレの名前を呼んだ。
「こっちです」
言われるがままに手を引かれて、転がり込むように空き教室に入る。
「凄いですね」
「ホント、凄いっスよ。あのエネルギー、どこから来てるんスかね?」
「さぁ…」
数拍の無言。
ややあって、黒子っちが口を開く。
「雑誌、見ました。少しですけど」
「…どうっスか?」
「変です」
はっきりとした口調で言い切る、
黒子っち、歯に衣着せなすぎなんスよ。
ザックリと言葉の槍が胸に刺さった。
「そんなに変スか?」
「はい。カメラに向かって笑顔を作って……本当の表情を知っているボクにとっては、違和感でしかないですね」
「黒子っち、キッツ!! それでも頑張ってるんスよ?」
「知ってます。でも、」
白い腕がスッと伸びてきて、男の手だけど、オレとか青峰っちとは全く違って華奢な指がオレの頬を軽く抓った。
すぐに離れて、オレはやや笑いのほうが多い苦笑を漏らす。
「そういう表情のほうがボクは好きです」
ああもう、こういう読めないことをしてくるから、黒子っちが大好きなんスよ!!
END
2013/07/25