BOOK ダイヤのA
□倉持×御幸01
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授業終了を告げるチャイムの音で、御幸は目を覚ました。
いつの間にか枕の代用品となっていた痺れた両腕を机からひっぺがして、ぐっぱっと握る。
血が通っていなかったせいか、効きすぎる冷房のせいか、どことなく腕全体が冷たい。
「御幸ィ、メシ食おうぜ」
コンビニで調達した惣菜パンの入った袋を御幸の机に置きながら、倉持が御幸を揺らす。
んん、と子どもがむずがるような声を上げた御幸は、ぼんやりとした頭のまま倉持へ抱きついた。
「――!?」
「くらもちは、ぬくいな」
舌っ足らずで甘えるような口調。
擦り寄せられた御幸の頭へ、動揺が一回転した倉持がチョップを食らわせた。
「俺は暑ィわ、ボケ!」
「いたっ。んーでも、ほら」
手ぇ冷たい。
ただその温度を伝えるために首元へ当てられた手にドキリとして、照れ隠しにもう一度食らわさんとチョップの手が振り上げられた。
ようやく倉持で暖を取ることを諦めた御幸は、冷房効率のために閉ざされていたカーテンに包まる。
「あー、沢村来ないかなー」
「…おい、それは当てつけか?」
低められた倉持の声。
その意味を知っていて、御幸はカーテンの中で唇を尖らせた。
「だって沢村ぬくいんだもん」
「拗ねてんじゃねーよ。…ったく」
手ェ貸せ。
そう言いながら、倉持は御幸へ手を伸ばした。
ぎゅっと冷えてしまった手を握る。
「…あったかい」
「そーかよ」
ふふふ。と、御幸が他の誰にも見せない顔で笑う。
カーテンの中でこっそり、2人の指が絡まった。
END
2014/06/23
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後書きと懺悔と言い訳