BOOK うたの☆プリンスさまっ♪

□レン×真斗01
1ページ/1ページ


 家柄のせいでなにをするにしても比較される。
 うんざりだった。

 勝手に聖川に対して敵愾心を抱いて――それは向こうも同様だったようだ。
 学園で会ったときにキツイ視線を寄越してきたからな。

 でも聖川は、オレの想像していたような人間ではなく、とても努力家で愛らしい性格をしていた。
 性格だけでなく、ふとした瞬間に見せる表情も――。

「これはキッツイなぁ……」

 窓辺に立って、月を見上げる。

 今まで何とも思ってない、むしろ嫌いの部類に属していた人間を、いきなり好きになった。
 しかも同室とくれば、眠れない夜の苦しさは何物にも喩えることはできない。
 こうして月を見上げる夜も、何回迎えただろうか。

「……眠れないのか、神宮寺」
「ッ!! まぁね」

 内心の動揺を抑え込んで、振り返った。

 寝ぼけた目を擦りながら、聖川がゆっくりと布団の上に上体を起こす。
 足元をふらつかせながらこっちに来る彼のために場所を空けて、並んで月を見上げた。

「眠れないときには、羊を数えるといいと聞くぞ」
「……ぷっ」

 思わず零れた声を耳ざとく拾って、聖川は眉を吊り上げる。

「し、失礼な奴だな。人が好意で…」
「ゴメンゴメン。ただ、古風だなって思っただけだよ」

 あれ、オレ、こんなに自然に喋れたっけ?
 オレたちは同室だというのに、いつもツンケンとしか喋ってなかった気がする。

 今肩に手を伸ばして引き寄せて、愛を囁いたらどうなるか。
 フラリと浮いた手に、自制をかけるように、力を込めた。

2013/07/14

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ