BOOK ハイキュー!!

□研磨×黒尾01
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 クロは強引なように見えて、その実、やさしい。
 おれが本気で嫌がることは絶対にしないし、逆におれが本気で求めているなら、可能な限り応えてくれる。

 だから、今も。

「ねえクロ、キスしたい」

 ちょうどゲームのキリがいいところまで進んだから、きっちりセーブをかけて電源を落とす。
 ちょいちょいとクロの肩を後ろから突いて強請ると、クロは僅かに戸惑ったように表情を変えて顔だけで振り返った。

「俺、課題してんだけど?」
「知ってるよ。だから、キスだけ」

 もちろん、その先だって当然のようにしたいけど。
 クロの邪魔をするつもりはない、邪魔をして面倒だと思われるつもりはない。

 だから、応えてくれることしかおれもワガママを言わない。

「仕方ねーなあ。来い」
「……ん」

 ゲームをしていた体勢のままベッドにいる俺と、ミニテーブルに向かって勉強をしていたクロ。
 問題集の間にシャーペンを挟んで閉じたクロは、そのまま向き直って軽く両腕を広げて見せた。

 いつもと逆の目線が、少し落ち着かない。
 頬を手で包んで顔を近づけて、クロがジッと片目だけで見上げてくるのが気まずくて、早めに目を瞑ってしまった。

 フニフニと表面同士を擦り合わせてから、胡散臭いと言われる元であろう薄い下唇を吸う。
 弱く声が漏れ出たのを確認してから、軟らかい粘膜の中へと舌を潜り込ませた。

 おれの口はそんなに大きくないし、舌も長くない。
 だから、口でクロの口内を愛撫しようとも限度がある。
 誘い出した舌先を吸ったり、前歯の裏を舐めたり、おれが知り得る限りのクロが気持ち良くなるところを舌で刺激していると、強い力で肩を押された。

「もうこれ以上はダメ」
「……なんで。キスしかしてないでしょ、言われた通り」
「ねちっこいんだよ、お前。変な気分になるっつーの」
「なっていいのに」

 おれだって男だし、そういう欲がない訳じゃない。
 したい時はしたい。
 そして、今は何となくそんな気分だった。

「後でな、今課題やってっし」
「……終わったらえっちしていいの」
「……お前なあ」

 クロが呆れたようにハァと息を吐いて、おれは思わずビクリとした。
 調子に乗りすぎたかもしれない、クロに嫌われたかもしれない。

「準備もあるし、晩飯食って風呂入ったらな。今からじゃそんなに時間ねーし、逆に課題終わらしたらちょうど飯の時間だろ」
「わかった、待ってる」
「おう、いい子だな」

 クロがベッドのマットレスに体重をかけて、おれのほうに乗り出してくる。
 古びたスプリングの軋んだ音を聞きながら、珍しいクロからのキスを受ける。
 子供みたいな重ねるだけのキスだったけど、クロからなんて滅多にないからいいや。

「早くシようね」

 随分と目線より低い位置にあるクロの上体に抱き着いて呟いた。


END

2016/04/13

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