BOOK ハイキュー!!
□及川×影山02
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あぁ、しまった。
改札を出た瞬間、そう思った。
大学進学と共に東京へ出て2年、冬の真っ白さを忘れて、傘を持ち歩く習慣がなくなっていた。
田舎の駅前は店が閉まるのが早いし、コンビニも同様だ。
仕方ない、降られながら歩くか。
「駅、に、着いた、よ」
電車内との温度差に悲鳴を上げる指でスマホの画面をタップして、LINEメッセージを打ち込んでいく。
「早く飛雄に、会いたい。もう少し待ってて、ネ……っと」
「別に、待たなくていいっスよ」
「へ?」
ぴろん♪
静寂に間抜けな着信音が吸い込まれる。
「飛雄、」
「迎えに来ました」
やっぱり忘れてたみたいですね、傘。
なんて、からっぽの俺の手元を見ながら。
仕方ないだろ、うるさいなぁ。
「家に傘、一本しかなかったんで、狭いのは我慢してくださいね」
雪が降ってくる夜空に、バッと黒い傘の花が咲く。
俺に差し出すように傾けてくれる傘の柄を、俺は飛雄の手ごと掴んだ。
「トビオちゃん……何か俺、やばい……」
「どうかしたんスか?」
「うん……嬉しくってサ」
軽く手を引いて歩き出しながら、俺は言う。
踏み出した足に、さくりと積もった雪の感触が伝わった。
「迎えに来てくれたデショ? それが嬉しくて」
「それは……傘を忘れてるだろうと思ったから……」
「ウン。でもそれが嬉しいの」
人差し指の先で飛雄の手の甲を撫でると、頬が一刷毛、朱に染まった。
ああ、これだよ、この反応。
「会いたかったよ」
「お……俺も会いたかったっス」
「日付が変わる前に会えてよかった」
一年に一度しかない君の誕生日。
それを直接祝うことができてよかった。
「傘、ちゃんと持っててね」
「え? ……ちょっ」
腰を引き寄せて、口付けた。
うまくすればこの傘が、俺らの姿を隠してくれているだろう。
……もっとも、田舎の駅に人影はないのだが。
誕生日おめでとう、飛雄。
END
2014/12/18
2015/02/02 修正
後書き
飛雄ちゃん、誕生日おめでとうございます。
全力で、お祝いさせていただきました(これが全力です、すみません)
あれ?プレゼントどこ行ったんだ?とかいうツッコミは受け付けませんぞ!断じて!
はい、力不足です。
こんな駄文で申し訳ありません。
飛雄ちゃんにも閲覧者の皆さんにも。
ありがとうございました。