BOOK ハイキュー!!

□及川×影山02
1ページ/1ページ


 あぁ、しまった。
 改札を出た瞬間、そう思った。
 大学進学と共に東京へ出て2年、冬の真っ白さを忘れて、傘を持ち歩く習慣がなくなっていた。

 田舎の駅前は店が閉まるのが早いし、コンビニも同様だ。
 仕方ない、降られながら歩くか。

「駅、に、着いた、よ」

 電車内との温度差に悲鳴を上げる指でスマホの画面をタップして、LINEメッセージを打ち込んでいく。

「早く飛雄に、会いたい。もう少し待ってて、ネ……っと」
「別に、待たなくていいっスよ」
「へ?」

 ぴろん♪
 静寂に間抜けな着信音が吸い込まれる。

「飛雄、」
「迎えに来ました」

 やっぱり忘れてたみたいですね、傘。

 なんて、からっぽの俺の手元を見ながら。
 仕方ないだろ、うるさいなぁ。

「家に傘、一本しかなかったんで、狭いのは我慢してくださいね」

 雪が降ってくる夜空に、バッと黒い傘の花が咲く。
 俺に差し出すように傾けてくれる傘の柄を、俺は飛雄の手ごと掴んだ。

「トビオちゃん……何か俺、やばい……」
「どうかしたんスか?」
「うん……嬉しくってサ」

 軽く手を引いて歩き出しながら、俺は言う。
 踏み出した足に、さくりと積もった雪の感触が伝わった。

「迎えに来てくれたデショ? それが嬉しくて」
「それは……傘を忘れてるだろうと思ったから……」
「ウン。でもそれが嬉しいの」

 人差し指の先で飛雄の手の甲を撫でると、頬が一刷毛、朱に染まった。
 ああ、これだよ、この反応。

「会いたかったよ」
「お……俺も会いたかったっス」
「日付が変わる前に会えてよかった」

 一年に一度しかない君の誕生日。
 それを直接祝うことができてよかった。

「傘、ちゃんと持っててね」
「え? ……ちょっ」

 腰を引き寄せて、口付けた。
 うまくすればこの傘が、俺らの姿を隠してくれているだろう。
 ……もっとも、田舎の駅に人影はないのだが。

 誕生日おめでとう、飛雄。


END

2014/12/18
2015/02/02 修正


後書き

 飛雄ちゃん、誕生日おめでとうございます。
 全力で、お祝いさせていただきました(これが全力です、すみません)
 あれ?プレゼントどこ行ったんだ?とかいうツッコミは受け付けませんぞ!断じて!
 はい、力不足です。

 こんな駄文で申し訳ありません。
 飛雄ちゃんにも閲覧者の皆さんにも。
 ありがとうございました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ