BOOK 黒子のバスケ2

□日向×伊月03
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 最近、伊月に避けられてる気がする。
 だからオレは、

「ひゅう、が?」

 伊月の家に押しかけてみた。

 ◇ ◇ ◇

 飲み物を持ってくるというのを引き止めて、隣に来させる。
 柔らかく微笑んでオレの隣へ座る様子を見ていると、とてもオレを避けているようには見えなくて、どう話を切り出したものかと迷う。

 結局オレが選んだのは、

「お前、最近オレのこと避けてるだろ」

 芸もなく直球だった。

 え? と伊月は無声音を漏らし、こちらを向く。
 感情の読めない顔に、オレは更に言い募った。

「時期的に、木吉が復帰した頃から。オレにはお前を怒らせた記憶がないんだが」
「オレもケンカした覚えないよ?」

 平静を装った、黒い瞳が揺れる。

「じゃあ何でだよ」
「だから何もないってば」
「伊月、」
「……言いたくない」

 プイッと拗ねたように、――でも真意は顔を隠すためだろう――顔が背けられた。

「言ったら絶対に日向は呆れる」
「かもな」

 理由が分からないから、曖昧に肯定する。

「だから言いたくない」
「呆れないかもしんないだろ」
「呆れるかもしれない」
「呆れないかも」
「呆れる」
「呆れねぇ」

 何だこの終わらない不毛な会話は。

「だーッ、とりあえず言えって!!」
「なんでクラッチ入るんだよ」
「お前がとっとと言わねぇからだろうが!!」

 日向が、と伊月は小さく口を開いた。

「日向が、木吉とばっかり話してるから、」
「……へ?」
「楽しそうだったから、ヤだった」

 立てた両膝の間に頭を落として、聞き取るのが困難なほど小さい声で伊月は呟く。

 オレが木吉と話しているのが嫌だった?
 …それって。

「……嫉妬?」
「そうだよッ!!」

 悪いかと涙目で逆ギレされて、どうすればいいのか、分からなくなった。
 大体キレるのはオレばっかりで、伊月はそんなオレを宥める役回りが多いのに。

「…呆れただろ、心狭いって」
「や…」
「だから言いたくなかったのに」
「別に呆れてねぇよ! むしろ…」

 むしろ、木吉と話しているのを見て嫉妬されて、オレは……。

「少し、嬉しい」
「…嘘だ」
「嘘じゃねぇよ。そりゃ、ちょっとはビックリしたけど」

 見上げてくる濡れた黒曜の瞳に、ドキリと胸が鳴る。
 同じ色をした髪を撫でながら、オレも胸の内を打ち明けた。

「妬くのはオレばっかだと思ってたからさ」

 イーグルアイを持つ伊月が黒子のことを見つけれるってことで、黒子も伊月に懐いてるように見える。
 この間も部活中の休憩時間に伊月と黒子が話してるのを見て、心臓を火で炙られるような感覚を味わったばかりなのだ。

「だって黒子もパス回しが仕事だし、オレと共通する部分があるからさ」
「そりゃそうだけど、」
「それに、オレだけじゃなく、火神も黒子のことを見つけれるようになってきたし」

 あの2人、いいペアだよな。
 そう言って笑う伊月はきっと、火神のことも気にかけていたんだろう。
 伊月はそういう、“優しいお姉さん”みたいな立ち位置にある。

「オレもたいがい、心狭いんだけどな」
「…何か言った? 日向」
「つまりは、オレもお前が誰かと喋ってるだけで妬くってこと」

 それがチームメイトであろうと、同級生であろうと。
 けどその分伊月が好きな証拠だし、狂うほどでなきゃ、いいんじゃねーかな。


END

2013/04/09〜2014/03/13

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