BOOK 黒子のバスケ2

□赤司×実渕01
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『キセキの世代』主将、赤司征十郎が、今日から練習に参加するらしい。
 春休み最終日の朝、練習前に監督から告げられた言葉に、私達はざわめいた。

 赤司征十郎といえば、無敗を誇る『キセキの世代』の4番、つまりはキャプテンで、チームの要のPG。
 そして、この春からは、洛山高校の新主将となる。
 170cmにやっと届いたらしい身長は、プレイヤーとしては低く、しかしそれを補って余るほどの、体のバネ。

 私も中学の時に、帝光中とは何度か対戦したことがある。
 しかし、私達のまえに現れた赤司征十郎は、中学時代に見たものを大きく超えていた。

 存在感が大きい――。

 私より10cm以上低いのが信じられないくらい大きい、存在感。
 何も言わずとも、彼が立っているだけで、チーム内の空気が引き締まる。

 全員彼のことは知っているが、直接会うのは初めてである。
 痛いくらいの緊張感で、練習着のTシャツから出た肌が、ピリリとした。

「全員、練習を続けなさない」

 タイミングの予告がなかったせいで、みんな彼が現れたときのまま、その場にいる。
 監督が手を叩く音が体育館に響いて、ぎこちない空気のまま、練習が再開される。

「ああそうだ、実渕」
「はい?」
「赤司を更衣室に案内してやってくれ」
「どうして私が?」

 不満ではないが、他にも人はいる。
 その中でなぜ監督は私を選んだのか、気になった。

「お前がスタメンだからだ。根武谷や葉山だと、寄り道したりして、時間がかかりそうだからな…」

 苦い色を伴った言葉を、さすがに否定できずに、曖昧に返す。
 コタが職員室へのお使いに行くのに、野良猫と遊んでいて30分以上かかったのは、春休み前のことである。

「分かりました。…行きましょう」

 帝光中には劣るけど、洛山もそれなりに部員数は多い。
 それが故、更衣室は一軍用と、二軍用の2つに分かれている。

 一軍の更衣室はさほど遠くにはないけれど、それでもちょっと距離はある。
 少し気まずいわね、と思いながらも、「こっちよ」と赤髪の彼の先に立って、砂粒の散る渡り廊下を歩いた。

「…実渕玲央」
「え?」

 涼やかな声に名前を呼ばれて、ドキリとする。
 なぜ彼は私の名前を知っているのだろうか。

「監督に勧誘を受けたとき、一軍の名簿とデータをもらった。それで覚えている」
「一軍全員?」

 さらりとこともなげに言われるが、高校バスケ界のトップに立つ学校だ。
 一軍のみといっても、少ないわけじゃない。

「これでも記憶力はいい方でな」
「…そのようね」

 バスケで強い。
 頭もいいようだ。
 人を惹きつけるカリスマ。

 そしてなにより。

(この顔、超好みなのよね〜)

 惜しむらくは身長が足りないことだろうか。
 けれど、綺麗な顔。
 赤い髪はギラギラとはしておらず、暖色であるにも関わらず、涼しさを感じさせる。

「僕は強い。それは絶対だ。僕がいる限り――」

 ふたつの赤い瞳に射抜かれる。

「洛山は負けない」

 あぁ、だめ。
 堕ちたかもしれない。

 ◇ ◇ ◇

おまけ


「これからよろしくね、征ちゃん」
「征ちゃん!?」
「そう、征十郎だから征ちゃん」
「…好きに呼ぶといい」


END

2014/04/12

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