BOOK 黒子のバスケ2

□青峰×黄瀬03
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「どうすっかな…」

 オレは掌の中で小瓶を転がした。
 怪しい色の液体は、得体の知れない薬。
 服用者の性別が一晩だけ変わるというのが、唯一かつ絶対の価値…らしい。

 これを飲むか否か。
 今日を逃したら、明日から学校で、次はないかもという気になる。
 それに今日は、想い人の青峰っちの誕生日でもある。

「ここまで来れば、男は度胸っスよ」

 神か悪魔か分からないが、何かがお膳立てしてくれたのだ。
 使わない手はないだろう。

 目を瞑って、一口で煽った。
 途端、口内に広がるカキ氷のシロップよりも甘い味。
 喉につっかえながらも、少しずつ飲み込んでいく。

「うっ…ぇ、甘…」

 水、と思って立ち上がったときに、気付く。
 いつもより目線が低い。

 音もなく伸びる髪。
 肩がズレるTシャツ。
 膨らむ胸元。

「おぉぉ…ッ」

 普段と比較するに、現在の身長は165cmといったところか。
 目線がこの高さだったのは、何年前か。

「それにしても…服、どうすっかなぁ…」

 よもや体の大きさが変わるとは思ってもみなかった。

 数秒思案して、忍び足で部屋を出る。
 下の姉ちゃんが彼氏のところにお泊りだったはずだ。

「ゴメン、姉ちゃん」

 小さく断って、クローゼットを漁る。
 カップつきのタンクトップとスカート、それに袋に入ったままで新品だと推測できる下着。

 ブラも入っていたのだが、背中のタグを見て諦めた。
 目と手で大まかに測っただけだが、今のオレのほうが胸は大きい。

 またしても音を立てないように部屋に戻り、着替える。
 そして足音を忍ばせて階下へ。

 リビングでは母さんがパソコンを使っていたはず。
 鉢合わせしないように気をつければ、簡単に外へ出れた。
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