BOOK 黒子のバスケ
□高尾×緑間08
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「うーっ、さっびい!!」
手袋をした手を擦り合わせて、高尾が叫ぶ。
朝から降っていた雨は昼ごろには止んだが、湿気た空気は日が落ちてから大分経ったこともあり、11月にしてはかなり冷たい。
「今日はリヤカーじゃなくて良かったのだよ」
「ホントにな」
こんな日にチャリヤカーだったら、身を切るような冷たい風に耳を凍らされていただろう。
マフラーに顔の半分を埋めて息を吐くと、メガネが白く曇った。
これだから冬は嫌いなのだよ。
「真ちゃん?」
「…いや、何でもない」
それにしても今日は寒い。
おは朝の天気情報でも、1月中旬並みの寒さだと言っていた。
学校指定のカバンから小銭入れを取り出し、自動販売機に投入する。
気付かずに数歩進んだ高尾が、振り返って「いーなー!」と言った。
「フン、自分で買えばいいだろう」
「やー、うっかりサイフ忘れちって」
仕方ないな。
そう言うように鼻で溜息を吐き、押したボタンはコーヒー。
「えっ、嘘。マジで!?」
「今日だけなのだよ。…オマエに何をやったらいいか、結局最後まで分からんかったしな」
次いで自分のおしるこを購入。
マフラーを引き下げて頬に押し当てながら、きょとんとした顔の高尾に教えてやる。
「オマエは自分の誕生日すら忘れたのか」
「へ…? あッ!!」
そう、今日11月21日は高尾の誕生日だ。
もっともそれを聞いたのは4月、本人からだが。
「ありがとな、真ちゃん。いやーオレって愛されてる♪」
「ほざいていろ」
冷たく言い放っておしるこを飲む。
だが高尾が笑ったので、それは照れ隠しだとバレていたのかもしれないが。
END
2013/11/16