BOOK 黒子のバスケ
□黄瀬×笠松06
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「遅ェ馬鹿黄瀬…」
時刻は既に11時半を廻っている。
日付けが変わるまで、つまりは黄瀬の誕生日が終わるまでもう30分ない。
オレがこの部屋に来てから、ゆうに1時間は経過していた。
それでも黄瀬が今まで約束を破ったことはなく、残る時間は短いというのに、オレは黄瀬が帰ってくることを信じていた。
今日も、ほら。
廊下を爆走する足音が聞こえて、オレは口角を上げた。
根が生えてしまいそうだった腰を上げて、玄関で出迎える。
「スマセンっス! …センパイ!!」
「お帰り、黄瀬」
黄瀬はオレの姿に一瞬目を見張ると、駆け込んだ勢いそのままにオレに抱きついた。
「スミマセン、遅くなって…。センパイをいっぱい待たせちゃった」
「ちゃんとお前は間に合ったよ。それに――今日だけは先輩とか後輩とか、そんなものナシだ」
「『幸男さん』…」
「誕生日おめでとう、『涼太』」
そう、今日だけは特別。
潤んだ目で首筋に顔を押し付ける黄瀬に、普段は言えない「好き」をたくさん言って、オレも素直になろうじゃないか。
END
2013/06/04