BOOK 黒子のバスケ

□黄瀬×笠松01
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 スルリ、と笠松センパイの鞄から落ちた、紙の束。
 滴る汗を首に掛けたタオルで拭いながら、何気なくオレはそれを拾い上げた。
 数秒後には、それを後悔することになる。

 一番上に、大きく大学名が書かれていた。

「センパイ、これ…」
「あ、わり、落ちたか」
「ここ、行くんスか…?」

 大学名を指さすと、センパイはうーんと首を傾げた。

「どこにするか、決めかねてるんだよな。実際に見に行ったほうがいいとか言われるけど、んな時間もねーし」

 オレはずっと――ずっとセンパイと一緒にプレーできる気がしていた。
 3月になったら、センパイは、卒業しちゃうのに――

 知らず知らず、頬を涙が伝う。

「ちょ、おい!? どうしたんだよ!」

 一度泣いていることを自覚してしまうと、自分で止めることなどとうてい出来なくて。
 狼狽えているセンパイに大丈夫と言うことすら出来なかった。

 ぐいっと涙を拭って、それでも溢れるものはもう仕方ない。
 ぼやける視界でセンパイを見つめた。

「2年、留年して」
「おい…そりゃ無理だっつの」

 無茶言うなよ、と頭を撫でてくれるセンパイの手を掴んで引き寄せる。
 背伸びをしていたせいで不安定だった躰は、いとも簡単に胸に収まった。

「センパイが卒業しちゃったら、オレ、どうしたらいいんスか? 休み時間、誰と喋ればいいんスか? お昼ごはん、誰と食べればいいんスか……?」

 グズグズの鼻声で問う。

「部の奴と食えばいいじゃねーか。それか女子と……。おまえなら引く手数多だろ」
「イヤっス! オレはずっとセンパイと一緒に居たいんスよ……」

 こんなことを言ってもどうにもならないことは理解している。
 センパイを困らせていることも。
 でもオレのココロは拒絶してるんだ。

「黄瀬、学校じゃ一緒にいれないけど……オレ、大学入ったら近場で一人暮らしするつもりだったから、一緒に暮らそうぜ」

 一瞬その言葉が信じらずに、センパイの顔を見て、それが本心からの言葉だと分かると、ありったけの力で細い体を抱き締めた。


END

2013/01/27〜2013/02/09
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