BOOK 黒子のバスケ
□伊月×黒子01
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「伊月先輩の…」
「ん?」
小さな呟きが、オレの鼓膜を擽る。
顔を上げると、視線から逃げるように黒子は俯いた。
その表情はさながら「しまった」と言っているようで、言うつもりのなかった言葉だということが分かった。
それでもオレは続きを言うように促す。
「伊月先輩の傍にいるのは……とても、心地いいです」
か細い声が、小さな唇から紡がれる。
「伊月先輩だけがボクを見つけてくれるから、見つけてもらうために何かをしなくてもいいし、自然体でいられるんです。……すみません、自分でも纏まっていないんです」
「…そっか」
手を水色の頭に乗せると、黒子は驚いたように目を見開いた。
それから黙る。
オレも何を言ったらいいか分からずに、ただ黙っているだけだった。
すみません。と黒子が呟いたような気がしたが、依然としてその唇は引き結ばれたままだった。
END
2013/04/01
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