BOOK 黒子のバスケ

□伊月×黒子01
1ページ/2ページ


「伊月先輩の…」
「ん?」

 小さな呟きが、オレの鼓膜を擽る。
 顔を上げると、視線から逃げるように黒子は俯いた。
 その表情はさながら「しまった」と言っているようで、言うつもりのなかった言葉だということが分かった。
 それでもオレは続きを言うように促す。

「伊月先輩の傍にいるのは……とても、心地いいです」

 か細い声が、小さな唇から紡がれる。

「伊月先輩だけがボクを見つけてくれるから、見つけてもらうために何かをしなくてもいいし、自然体でいられるんです。……すみません、自分でも纏まっていないんです」
「…そっか」

 手を水色の頭に乗せると、黒子は驚いたように目を見開いた。
 それから黙る。

 オレも何を言ったらいいか分からずに、ただ黙っているだけだった。

 すみません。と黒子が呟いたような気がしたが、依然としてその唇は引き結ばれたままだった。


END

2013/04/01


後書き→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ