BOOK ダイヤのA

□降谷×沢村01
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「ねえ……。君……」

 さっきからずっとこんな感じだ。
 俺の後ろについて来て、コイツは犬か!

 また「ねえ」と呼ばれて、短い堪忍袋の緒が切れた俺は、クルリと振り返った。

「さっきからうるせーよ! ねえじゃなくて名前でちゃんと呼べよ!」
「名前で……?」
「おう。俺にも名前があるんだからな!」
「わかった……」

 コクリと頷いた降谷は、わずかに上体を屈めて俺の耳元で囁いた。

「栄純……」
「――ッ!?」

 いつもより少し低い声。
 ゆっくりと紡がれる音がなぜだか甘く感じて、カァと体が熱くなった。

「な……っ」
「どうしたの? 栄純」
「何でそっちで呼ぶんだよ!?」
「名前で呼べって言ったのは君だよ、栄純」

 何を言っているんだという顔を降谷はしている。
 え、これ、俺が悪いの?

 確かに名前で呼べとは言ったけど、普通その場合苗字で呼ばねえか!?
 コイツには常識ってモンが――

「何?」

 ――あるとは思えねえよなあ……。

「栄純」
「う……おう」
「名前で呼んでいいの? いけないの?」

 至近距離で、コトリと首を傾げて問われる。

「……勝手にしろよ」

 ぶっきらぼうに応えると、パァっと降谷のオーラが華やいだ。
 無表情のくせにわかりやすいというのは、こういう時に便利だ。

「で? 何の用だったんだ?」
「……忘れた」
「はあ?」
「君が……」

 わずかばかりの隙間を空けて、降谷が呟く。
 またさっきみたいな、骨まで溶けそうな甘ったるい声で。

「栄純が名前で呼ぶことを許してくれたのが……嬉しくて」
「……っ」

 ジワリと声を吹き込まれた耳が熱くなるのはなぜだろう。
 名前呼びだなんてライバルだと認めるコイツには絶対に許さないだろうに、仕方ないやと、許してしまったんだ。



2015/01/19


後書き

 降沢初書きです
 このネタは前々から書きたかったものの、なんとなくイメージが固まらずに放置していた
 やっと書けたぜー!

 栄純は中学時代のチームメイトから「栄ちゃん」呼びされていたので、きっと名前呼びには抵抗ないと思われる
 いきなり名前呼びされてワタワタする可愛さ……表現しきれなかったなァ

 降谷には御幸ばかりを宛てがってきましたが、やっぱ降沢いいっすね
 これぞWエース!!←作品違うw
 今回何となく「この雰囲気いいな」と思ったんで、また気が向いたら降沢書きます(しかし確約はしない!)
 お粗末!

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