BOOK ダイヤのA
□結城×伊佐敷04
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空を見上げると、月が紅くぼやけていた。
太陽の光が地球に隠され、淡い光だけが夜空に漂う。
(幻想的だ……)
時折見れる紅い月は不吉なものを感じるのに、今日は違う。
穏やかで、儚い。
「綺麗だな」
「……おう」
「純、……『月が綺麗ですね』」
こちらを見ずに言った哲は、その台詞の意味を解っているのだろうか。
キリリとした男らしい表情はいつもと変わらず、どちらなのかが分からない。
「次の皆既月食も一緒に見よう」
「おま……っ」
「返事は『はい』か『イエス』しか受け付けないぞ」
次の皆既月食まで、何年あるかは分からない。
けど、それまで俺達は一緒にいるんだ。
そして、きっとまた、次も一緒に見る約束をするのだろう。
この穏やかな時を、二人で過ごしたいから。
END
2014/10/08