BOOK ダイヤのA
□御幸×倉持01
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夏とは違い、窓から差し込むのは柔らかい光。
自習監督の教師が出て行った途端、先ほどから感じていた眠気が一気に強くなった。
(あ、ヤベ)
軽く頭を振って、眠気を払おうとする。
「御幸ィ、俺2枚目のプリントやっから、お前1枚目やれよ。あとで交換して写そうぜ」
「おう」
だが効果は薄かったのか、後ろから話しかけてきた倉持に応える声には欠伸が混じった。
「疲れてんなぁ、キャプテン」
「茶化すなよ……」
秋大に向けて練習が厳しくなって、やらなくてはいけないことも増えたから、睡眠時間は減っていた。
「しゃーねーな。全部やっといてやっから、少し寝てろよ。15分前に起こしてやる」
「いいのか」
「ヒャハハ。俺ってば、優しいから。解けるかどうかはわかんねーけどな」
「あぁ、それは確かに望み薄だ」
「テメェ」
「ありがとな、倉持」
眼鏡を外して机に突っ伏して。
視線だけを上げて倉持に告げる。
「練習の時に倒れられたら困るからな」
プリントから視線も上げずに答える理由。
ほんのりと赤い、目の縁。
「照れんなって」
「ケッ、誰が」
笑って目を閉じると、やがて意識は眠気に侵食される。
フッと途切れる瞬間に、温かく優しいものが俺の頭に触れた。
「――――」
END
2014/10/22〜2014/10/29