BOOK ダイヤのA

□降谷×伊佐敷01
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 青道のスピッツ。
 彼がそう呼ばれているのを知ったとき、何となくだけど自分が感じていたものと共通する部分があって、納得した。

 小柄な体躯。
 頻繁に吠えるところ。
 仲間には気を許しているところ。

 伊佐敷先輩の特徴を挙げていく度に、家で飼っている犬と被って見えて――

「お手……」

 手を、差し出してみた。

「は?」
「お手……」
「お前、バカにしてんのかおらぁぁ!!」
「だって、スピッツ……」

 二つ名のことに触れると、「スピッツって言うな!!」ってまた吠えた。
 やっぱり犬みたいだ。

「まぁまぁ、純。降谷も何か言いたそうだし、ちゃんと聞いてあげようよ」

 小湊先輩が助け舟を出してくれたけど、絶対この人は面白がってる。
 その証拠に、いつも笑ってる目元に涙が浮かんでるし。

 ついでに、沢村と小湊はオロオロしてて、御幸先輩は笑い転げてる。
 なんかムカついた……かも。

「家で犬飼ってたんです。だから……」
「あぁ、純が『青道のスピッツ』だから?」
「はい」

 あ、また吠えてる。
 どこまで犬っぽいんだろう。
 触れたら、どんな感じなんだろう。

 思わず、手を伸ばしていた。
 髪に触れて、手触りを比べる。
 あ、思ったよりも髪、柔らかい……。

 抵抗がないのをいいことに、抱きしめた。
 ザワ、って食堂中の空気がざわめいたのを感じたけど、そんなことは些細なことだ。

 温かい。
 犬のほうが体温は高いかな。
 でも、伊佐敷先輩も温かい。
 冬になったら暖を取らせてもらおう。

「……う」
「『う』?」
「うおぉぉらぁぁああああ!!」

 あれだけされるがままだったのに、急に腕を振り解かれて、床に尻餅をついた。
 痛みに顔を歪めている間に、伊佐敷先輩は脱兎のごとく(犬だけど)逃げ出してしまった。

「あ……」
「大丈夫、降谷。あれは照れてるだけだから」
「照れてる……?」
「うん。純は素直じゃないからねー」

 慰めてくれているのか、僕にあわせてしゃがみ込んだ小湊先輩の目には、浮かぶどころじゃない量の涙があった。
 笑いを堪える肩は揺れてる。

 ちなみに……御幸先輩は、笑いすぎて椅子から落ちていた。


END

2014/08/08


後書き

 別にギャグを目指したわけではないとだけ言い訳しておく
 けど、書いてる本人が途中で笑ってしまって「成実、アウトー」
 なんか、すみませんっした

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