BOOK ダイヤのA

□降谷×御幸04
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 いくら強豪校といえども、学生の本分は勉強であって。
 7月頭の1学期末考査に向けて、青道高校野球部も校則の通り、練習は休みになる。
 無論自主練習を禁じる決まりなどはないので、成績優秀者や赤点の心配がない者は、部活での練習がない分、普段よりも勉強する量を増やしながらも自主練習に勤しむことになるのだが。

 だがそれは、余裕がある者の話。

 1年バカ2人。
 そうまとめて呼ばれた沢村と降谷は、1週間ほど勉強漬けの毎日を送っていた。
 沢村は金丸に、降谷は春市に。
 それぞれ同じクラスであるチームメイトに教わる2人は、そろそろ精神の限界値を迎える頃だろう。

 投手のメンタルケアも、女房である捕手の務め。
 そう自分自身に言い聞かせて、御幸はいつもと違い控え目な音を立ててドアを叩いた。

 はい、と応える春市の声に少しだけモヤッとしたものを感じ、払拭するように御幸は頭を振った。

「御幸先輩、こんばんは」

 どうかしたんですかと問う春市に激励だと返しながら、御幸の名前で勢いよく振り向いた降谷へひらりひらりと手を送る。

 御幸の名前が呼ばれるその瞬間まで、凄まじい集中力を発揮していたというのに。
 滑稽に思えて小さな笑いが漏れるが、それも降谷が自分を一途に想う故だと考えが至り、こっそりと御幸は目元を紅くする。

「じゃあ、ちょっと予定よりも早いけど、休憩にしようか。ペースいいし、大丈夫だよね?」
「…うん」
「じゃあ、御幸先輩。俺は兄貴のところへ行くんで、ごゆっくり」

 普段から長い前髪に隠されている春市の目がばちりと御幸を捉え、“ごゆっくり”に込められた意味を性格に察した御幸は、その頬を染めた。

 勉強という名の拘束からやっと解放された降谷が、2段ベッドの下段に陣取る御幸の元へ向かう。
 裸足が立てるペタペタという音で、御幸はふと、猫の足音を思った。
 ただ、降谷は見た目どおりの猫ではいてくれないのだが。

「明日からのテスト、大丈夫そうか?」
「受けてみないとわかりません」

 それはもっともだと、御幸は苦笑する。
 勉強は順調か、そのような意味で問うたのに、降谷はわざとはぐらかしたのだ。
 もちろん、御幸はそれも分かりきっているのだが。

「勉強、疲れました」
「はっはっは、そりゃあ普段からやってねぇからだ」
「……」

 つーん、と気まずげに目を逸らす降谷に、御幸は笑う。
 自分も寝ている授業が大半なのだが、そこは要領の違いだろう。
 倉持と寝る時間を調整して、ノートを写し合ったりする術を覚えれば、かなり楽である。

 自分の膝で甘える降谷の額に、御幸はそっと唇を落とした。

「……え、」
「ねぎらいと祝福」

 お疲れ、と御幸は恥ずかしさを隠したそっけなさで告げる。
 頭上に疑問符を浮かべた降谷は、首を傾げた。
 途端、御幸のデコピンが額に刺さる。

「お前、自分の誕生日も覚えてねーの?」
「え? まだ6月……」

 深い溜息が、吐き出された。
 西向く士。
 小の月、つまりは1ヶ月に31日までない月の覚え方である簡単な語呂合わせすら知らないのか、と。

「もう7月だよ」

 バカと付け加えたいのを抑えて、御幸は告げる。
 降谷の斜めになっていた首が正常に戻り、頭上の疑問符は真っ直ぐに伸びて感嘆符となる。

 誕生日おめでとう。
 甘ったるい声で囁いて、極上の笑顔が浮かぶ御幸は、先ほどデコピン攻撃を仕掛けたばかりの額に再度祝福の口付けを贈った。


END

2014/06/30


後書き

 地の分を多めにしようと頑張ったんですが……
 途中で挫折しましたorz
 台詞入ると、途端に駄目になりますねー(苦笑)

 もう少し長くしようと思ったんですが、挫折ぱーとつー
 本当は裏要素を入れようとしたんですけどね
 時間の関係と、テンションですかね←
 ここだけの話、やっつけ仕事です(オイ)

 降谷君誕生日おめでとう☆
 テスト終わったら、御幸をあげるよ←
 ただし、赤点取らなかったらね……
 つまりはあげれないのさ

 閲覧ありがとうございました^^

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