BOOK ダイヤのA
□降谷×御幸03
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思えば、降谷の俺に対する執着は最初から強かったな、なんて。
カルガモの雛のように後をついてくる降谷を見て、不意に思った。
青道に来るキッカケも俺の記事だったらしいし、極めつけは1年と2・3年の試合直前の発言。
誰にも打たれなかったら球を受けてくれるか、って。
一発ブチかまして一軍入り、結果的に俺が受けることになったけれども。
今も受けてくれと後をついてきてるけど、俺は母鳥じゃねーっつの。
それに、言わなきゃ伝わらないことだって、あるんだぜ?
「降谷、もう部屋戻れ」
「……」
「はっはっは、無視かおい」
「受けてくれたら、戻って寝ます」
コイツが言い出したらテコでも動かないのはもう知ってるけど。
それでも「嫌」でなく、「駄目」と言うあたり、俺は降谷に甘いんだろうな。
降谷の場合は感情論に持ち込んだほうが手っ取り早いのも理解しているのに。
「その体力は明日に取っておけ。お前スタミナないんだからよ」
「受けてください。…じゃないと、伝わらないから」
降谷の切れ長の目が、ス…と伏せられる。
いつもは獰猛な狼みてぇなのに。と、少しおかしくなった。
「降谷。球じゃ伝わらないことだって、あるんだぜ」
「……」
「言葉にしなきゃ、伝わらねぇことだって」
ほら、言えよ。
俺が気づいてないわけねぇだろ。
どんな言葉の剛速球だろうが、絶対にちゃんと受け止めるから。
「……御幸先輩が、好きです」
俺の答えは、もちろん――
END
2014/06/25